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医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2026年3月4日 第3137号
令和9年3月から始まるOTC類似薬の新制度は、「保険外しではない」と説明されている。確かに、ロキソニンやアレグラ、ムコダインなど77成分・約1100品目は、形式上は保険適用のまま。しかし実態は、薬剤費の4分の1が「特別の料金」として全額自己負担となり、残る4分の3にも通常の3割負担がかかる。対象薬剤費が2千円なら、現行、自己負担600円が950円に増えることになる。
構造を見れば、事実上の薬剤の選定療養化である。選定療養とは、保険診療の枠内に残しつつ、「それを選ぶなら追加で払ってください」という二階建ての負担構造であった。本来は差額ベッド代など、医療のアメニティ部分に限定され、保険診療の中身を切り出して自費化する制度ではなかった。
ところが今回の制度は、名前を変え、「保険外しではない」と言い換えているだけで、特定の薬剤に価格ペナルティを課す点で、機能は選定療養と変わらない。外来では複数の対象薬が同時に処方されることも珍しくなく、その分だけ患者負担は積み上がる。
わずか数百円でも受診を控える人は出る。フリーアクセスが「無駄なもの」として縮減され、セルフメディケーションの名の下に自己責任医療が広がっていく。「贅沢は敵だ」といった通俗道徳に回収されたかつての歴史を想起させはしないか。
もともと財政制度等審議会では、経団連会長がOTC類似薬について選定療養の活用に言及し、給付見直しは以前から俎上に載っていた。日本維新の会や国民民主党は、保険外しを含む給付見直しを提言してきた経緯もある。結果として、「選定療養」という言葉を使わない形で一部自費化が実現してしまった。
問題は薬剤にとどまらない。今後も同じ手法で保険給付の縮小が広がらないか。かつて日本医師会執行部が混合診療解禁に危惧を示したのは、まさにこうした事態を想定してのことだったはずだ。(真)