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春寒料峭(しゅんかんりょうしょう)

府医ニュース

2026年2月25日 第3136号

 立春が過ぎ暦の上では春なのに、寒さがぶり返して、身にしみるような肌寒い日がある。数日暖かい日があった後の寒さは、余計に体に堪える。春寒、春寒料峭、寒の戻り、余寒、冴え返るなどの表現は、空気の冷たさや鋭さが強く伝わってくるように思う。

 春寒や
  膝を気遣ふ
     月曜日
       堀秀堂

 週の始めの厳しい寒さに、身体(特に膝)の調子を心配しながら、一日をスタートさせる。身を労る気持ちの表れに、思わず共感してしまう。2月25日は、「ひざ関節の日」。100歳まで歩ける身体づくりと、ひざ関節の健康を促進する日だそうだ。
 2月25日は、斎藤茂吉の忌日でもある。
 脳出血、左の不全麻痺で、晩年は歩行や膝の動きに支障があった。作品にも、老いや死を意識したものが見られる。衰弱が進んでも作歌を続けた。最後の歌となったのは、「いつしかも日がしづみゆきうつせみのわれもおのづからきはまるらしも」いつのまにか日が沈んでいくように、この世を生きる私の人生も、おのずから終わりに近づいているようだという意味。「うつせみ」は「この世」を意味し、「きはまる」は、この場合、「終わりとなる、果てる」を表す。「きはまる」は、天国に行くという肯定的なものでもなければ、消えてなくなってしまうという否定的なものでもない。ただ、生から死への自然な移り行きがある。
 晩年、衰弱し朦朧とした状態で作られたため、散漫という評価もある歌である。認知症も進行していたと、息子である北杜夫の「茂吉晩年」にも記されている。ただ、この歌は、いつの間にか枕もとの紙に書いてあったそうだ。
 あらためて、春に向かう寒さの中で、生きるということを思惟している。(颯)