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時事

健康保険料率が上昇

府医ニュース

2025年5月28日 第3109号

税と社会保障の一体改革必要

 健康保険組合連合会(健保連)は4月23日に各組合の今年度予算を集計して公表した。加盟1372組合のうち1043組合(76.0%)が赤字になり、組合全体の赤字額は3782億円になると推計している。賃上げなどによって保険料収入は増え、収支は昨年度予算より2800億円改善する見通しであるが、「団塊の世代」が75歳以上になり、高齢者の医療費を賄うための拠出金も増えることなどから、全体では赤字となる。この財政の悪化に伴い、平均保険料率は9.34%で、令和6年度予算比で0.03ポイントの上昇を見込んで、社会保険料の上昇は賃上げによる消費拡大効果を減弱させるとの指摘もある。
 「組合健保」を運営する健康保険組合は大企業や業界ごとに設立され、2年度のデータでは加入人数の割合は23.5%で、全国健康保険協会(協会けんぽ)の31.4%、国民健康保険(国民健康保険組合2.2%を含む)24.1%に次いで3番目となっている(後期高齢者医療制度14.1%、各種共済6.8%)。「組合健保」は「協会けんぽ」にないメリットがあり、保険料率を組合ごとで自主的に設定でき、料率が低い傾向があるのみならず、従業員の負担割合を減らすことができるとともに、それぞれの組合で独自に定めた「付加給付」を受けることができる。7年度の各組合の保険料率は一部のみ公表されているに過ぎないが、4年度保険料率ランキングの低率の1位は5.5%、10位は6.3%であり、このうち事業主と従業員負担分が同率であった組合は3組合に過ぎなかった(従業員負担の最低は1.5%)。一方、「協会けんぽ」の保険料率の全国平均は10.00%、最低は沖縄支部の9.44%で、「組合健保」の平均保険料率9.34%以下の支部はなく、22支部は10%を超えており、大阪支部は10.24%である。
 財政制度等審議会は4月23日に開催した財政制度分科会で、「持続可能な社会保障制度の構築」の議事を行った。医療・介護保険給付費等は平成24~令和5年度に年2.9%のペースで伸び、雇用者報酬の伸び年1.8%を上回っており、結果として保険料率は上昇してきた。若年・子育て世帯の手取り所得を増加させるとともに、社会保障制度の持続性を確保する観点から、医療・介護の保険料率の上昇を最大限抑制する必要がある。医療・介護の保険料率の上昇傾向に歯止めをかけるには、医療・介護給付費の伸びを雇用者報酬の伸びと同水準にする必要がある。医療費の伸びのうち、人口増減や高齢化による部分は半分強であり、予算による統制の外で行われる新規医薬品の保険収載など人口要因以外の部分も大きなシェアを占めている。政策的にはこの「人口要因以外」の部分における重点化・適正化努力を強化することで、保険料負担を含め国民負担の増加を抑制していく必要があるとした。しかし、医療費の上昇の一因である医療の高度化は国民の健康、長寿に寄与してきており、政府は医療制度を守るために必要な医療のあり方について、税と社会保障の一体改革に正面から向き合って議論をすべきと考える。(中)