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時事

薬の処方の意味、あり方

府医ニュース

2022年5月4日 第2999号

望まれる、病院と地域のコミュニケーション

 4月13日、厚生労働省「高齢者医薬品適正使用検討会」第15回の会合が開催された。同検討会は平成29年4月に立ち上げられ、多剤処方(ポリファーマシー)を中心に議論が行われてきた。30年5月に「高齢者の医薬品適正使用の指針」総論編、令和元年6月に同各論編(療養環境別)、3年3月には、ポリファーマシー対策を始める方法や始める際の課題と対策、進める上での体制づくりや実施の具体策、様式事例集などを盛り込んだ業務手順書「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」を取りまとめてきた。
 ここではポリファーマシーとは、多剤服用の中でも害をなすものとされ、単に薬剤数が多いのみならず、それに関連して薬物有害事象(使用後に発現する有害な症状または徴候であって因果関係の有無は問わない)のリスク増加、服用過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態と定義されている。
 今回の検討会では、上記業務手順書を実際に運用した三つのモデル医療機関から報告が行われた。課題として、▽「急性期病院では入院契機となった疾患の治療が最優先」「人員不足」といった根本的な背景への対応は困難▽入院主治医が他科処方の見直しを敬遠することへの解決策が不十分▽カンファレンスへの多職種参加のコストのため、診療報酬上の評価(薬剤総合評価調整加算など)の有益性が薄れる可能性――など院内の問題のほかに、▽薬剤師主導でチームを立ち上げる際は、当院の医師と地域の医師との連携体制の構築が難しい▽患者が様々な地域から来院している場合、かかりつけ医やかかりつけ薬局も多様であり、地域連携の実現が難しい――など、地域連携に関するものも挙げられた。手順書に、病院機能・特徴を踏まえた地域連携の具体例・モデルケースを盛り込む提案もなされている。
 地域での処方の見直しを促す病院からの働きかけとしては、ポリファーマシー対策のほかに、フォーミュラリの要素もある。フォーミュラリは、一般的には「医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針」とされ、採用(推奨)医薬品リストは、医師や薬剤師などで構成される委員会で協議し、継続的にアップデートされる。政府の「骨太の方針」でも活用が盛り込まれており、院内フォーミュラリから地域フォーミュラリへの拡大の動きがある。
 このような状況の中、今回の診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋について、開業医の過半数が反対しているのに対し、勤務医の反対は2割前後、開業医の賛成は1割前後にとどまるのに対し、勤務医の賛成は3割前後に達するとのアンケート結果もある。賛成の理由には、患者の通院負担軽減、医師の業務負担軽減、患者のコロナ感染リスク減少などが挙げられている。
 今後の病診連携において、薬への向き合い方や処方の意味のコンセンサス形成が、重要な課題となり得よう。
 (学)