
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2021年4月7日 第2960号
「第7回医療と介護の総合展(通称:メディカルジャパン)」が、2月24日から26日の3日間、インテックス大阪(大阪市住之江区)において開催された。24日午前のセミナーでは、茂松茂人・大阪府医師会長が「医師会が展望する2025年――ポストコロナに向けた地域医療構想」と題して講演。今回の新型コロナウイルスなど新興感染症や災害など有事における医療体制について、自身の考えを語った。
近年、日本の人口が減少局面を迎え、2065年には総人口が9千万人を割り込み、高齢化率も38%に上昇すると予想されている。都市部の高齢者増加と地方の過疎化、65歳以上の単独・夫婦のみ世帯や認知症高齢者の増加など、我が国では多くの問題を抱えている。
登壇した茂松会長は、まず、地域医療構想での大阪府における主な課題として、①回復期病床の不足②将来的な疾病構造の変化に対応した病床の役割分担③民間病院の割合が高い――ことを挙げ、これらは戦後の国民皆保険制度を進める中で生じたものと説示。国が進める公立・公的医療機関の再編統合、2040年を展望した三位一体の改革(地域医療構想の実現、働き方改革の推進、医師偏在対策)に対し、今回の新型コロナを受けての検証も無く進められていることに苦言を呈した。
なお、地域包括ケアシステムでは、「担い手の減少」と「ケアを必要とする方の増加」という根本的な問題があり、高齢者の社会参加による自立や介護分野の人材確保が、社会保障を持続可能なものとするためにも必須であると述べた。
新型コロナが医療に及ぼす影響として、▽病床逼迫による医師・看護師などの不足▽新規外来・入院および救急搬送の受け入れ制限▽検査・手術予定の延期――を列挙。大阪の救急搬送が保てたのは、地域の民間病院が中心となって務めた結果と感謝の意を示した。しかし、受診控えや風評被害による医業の減収、医療従事者の疲弊および離職は続いているとし、診療報酬上での支援を中医協に求めていくことが必要とした。
また、介護領域でも、通所介護を中心に休業が拡大し、「サービスを受けられない高齢者の心身機能の低下」や「介護の負担に直面する家族の増加」など、影響が大きいことを指摘した。
新型コロナに対して、当面は、不要不急の外出自粛などを社会的に理解を得ながら訴えていくとともに、特に高齢者施設のクラスター発生の予防、感染患者の治療後の転院病床体制に重点を置きたいと言及。また、現在の医療計画や地域医療構想が、新興感染症や地震・風水害の対応など地域で求められるものが考慮されておらず、再考する必要があることを強調した。
2024年度からの第8次医療計画では、「新興感染症対策」が事業として追記されるが、災害を含めた有事には「設備などが充実する公立・公的病院や大規模民間病院が重症(重傷)者を受け入れ、民間の中小病院は、その期を脱した患者、軽症(軽傷)・中等症患者を受け入れる体制」は必要であると断言。その際、民間病院は準公的機関として、財政上の支援も必要であると付け加えた。そのほか、公立・公的病院には、その成り立ちの歴史的背景から、過疎地・へき地等の医療や都市部での救急医療など、採算性が低い医療サービスの提供も求めた。
なお、大阪府では、医師会・病院団体からの要請を受け、コロナ治療後の退院基準を満たした患者の「転院支援チーム」を設置。コロナ病床の長期入院患者の6割が「コロナ感染症の症状以外」の入院という実態があり、今後、圏域ごとに考えることで、地域医療構想につながる施策と期待した。
日本の病床数は多いものの、ICU(集中治療室)や感染症病床が少なく、新型コロナ患者の受け入れ数や病床使用率などのデータを詳細に分析しなければ、地域医療構想の見直しの議論は行えないとした。また、感染症専門医や行政医師が少ないことも課題であると指摘。有事を想定した様々な研修会を開催し、多くの医師・看護師などに受講してもらうことが必要で、来年度からの実施に向けて検討会議を医師会で立ち上げていることを明らかにした。
1994年の「地域保健法」成立からの保健所数の減による公衆衛生機能の低下を問題視した。大阪府が新規に考える有事の際の「外部派遣職員の配置」を推奨。大学の公衆衛生の医師や学生らと日頃から連携をとることは重要とした。地域包括ケアシステム構築に向けても、保健所は、医療と介護、双方の調整役を求められ、最近では、新型コロナの定期的PCR検査など、高齢者施設でのクラスター対策も担っていると詳述した。
なお、介護分野における▽人材の確保▽事業所への財政支援▽賃金の引き上げ▽人材育成の仕組みの体系化――は喫緊の課題で、介護事業所の経営基盤の脆弱性もあり、低く固定化されてきた介護報酬の見直しが必要との見解を示した。
今後は、新型コロナを契機として、国の在り方、地域医療体制の在り方、国民皆保険制度の重要性をもう一度見つめて、この国民の医療・社会保障を充実させることを念頭に議論していくことが大事であると締め括った。