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医師・医療関係者のみなさまへ

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時事
府医ニュース
2020年9月30日 第2941号
日医総研から「大手調剤薬局等の2019年度決算とその後の状況(新型コロナウイルス感染症の影響)」として、令和2年4月~6月を含めた営業収支の調査が発表された。調査によれば、コロナ禍で大手調剤薬局やドラッグストアの売り上げ高が増加したとある。受診抑制のため診療報酬が減少しているほとんどの医科と比較して、増収になった薬局が一部の大手に集中したのである。
増収になった大手調剤薬局関係者の説明では、受診抑制と引き換えに長期処方が増加したこと、診療報酬改定後に処方箋単価の上昇があったこと、また新規出店が増加したために売り上げが増加したということである。しかし中堅調剤薬局の売り上げは横ばいであった。我々が注目すべき点は、調剤薬局の世界では、M&Aなどで寡占が進んでいる現実である。更に新型コロナという大きな波が通過した後でも、医科のほとんどが翻弄されたにもかかわらず、薬科では業績を維持または伸ばした中堅以上の調剤関連企業があったという現実である。この現象に対して日本医師会は、次期診療報酬改定での医科と調剤の比率の見直しに言及した。
さて、薬科増収の原因である処方箋枚数と処方箋単価を詳しく見ると、処方箋単価は薬剤料と技術料からなり、長期処方は当然のことながら薬剤料は一時的に多くなる。また毎月処方される薬剤量は一定のため、変動が慣らされると長期的には平準化していくため、このことに関しては一時的であろう。しかし技術料については医科と薬科では大きな差がある。医科は処方日数にかかわらず11点であるが、薬科では7日以内28点から31日以上86点と処方日数によって点数が異なる。更に2年度診療報酬改定により、後発医薬品調剤体制加算は、75%以上後発品処方の加算1の場合18%から15%に引き下げられるも、後発品85%以上の場合である加算3は26%から28%に引き上げられている。また処方箋単価への地域支援体制加算は、35点から38点に引き上げられた。このうち調剤基本料1該当薬局では、医療機関への情報提供または地域ケア会議等の出席要件がある。また基本料1以外の薬局では、麻薬の管理指導実績要件が緩和されている。すなわち、以上のような要件を一薬局内で上手く組み合わせたり、そのような要件を備えて新規出店したりすることで、コロナ禍であっても比較的効率の良い経営が可能となる。
以上のような論理はすべての薬局に当てはまるわけではない。コロナ禍で増収したのは売上高100億円以上の大手調剤薬局とドラッグストアであり、中堅以下の調剤薬局では売上げ高そのものが横ばい傾向にあり、減収しているところもある。大手の経営手腕がなせる技である。
コロナ禍以前から増収傾向にある大手調剤薬局の財務状況は、ここ数年売上高は右肩上がりである。更にROE(自己資本当期純利益率)は低下傾向を示し、新規投資で事業拡大をしていることを示している。事業拡大は収益や株式市場より資金を調達し、技術革新や上記診療報酬改定に伴う新規出店などの投資をすることである。ROEは分子である純利益が増加しても、分母の積極的投資が行われたので、その商である利益率が低下している。また積極的投資の動機になる内部留保(利益剰余金)は、大手調剤薬局ではここ数年右肩上がりで、財務に余裕があるからこそ投資に踏み切ることもできる。実際平成30年の大手5社の内部留保は155億円であり、この額は同年度の調剤報酬本体改定財源とほぼ同額にまで拡大した。
医科と薬科は協力関係にあり、建設的な対応が日本の医療にとって重要である。コロナ禍で一時的な変動があったとしても、今後の成り行きを見守る必要はある。しかし今回明確になったことは、調剤薬局の世界では資本主義体制がかなり進んでいることである。これは国民皆保険制度を根幹とする医療体制とは異なる。
政府は医療に資本主義体制を持ち込むことにより国民医療費を削減する方向に向けていたが、それが今回のコロナ禍で弱さを露呈し、採算を度外視した体制も必要であることが国民に周知された。資本主義は個人努力によって効率化した結果の報酬は合法であり、自由主義社会の原動力でもある。一国で2つの制度に整合性を持たせるためには、それぞれの体制を否定するのではなく、診療報酬による調整が重要となるのであろう。(晴)