
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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新春対談
府医ニュース
2017年1月4日 第2807号
平成28年7月10日に実施された第24回参議院議員選挙で、医療福祉系の自民党比例候補者でトップとなる21万562票を獲得して当選を果たした自見はなこ参議院議員。勤務医、国会議員秘書としての経験、そして40歳という若さを生かし、日々精力的に活動している。新春特集では自見氏を迎え、茂松茂人・大阪府医師会長とともに、医政の重要性や医療界の動向、更には医学教育の展望などについて対談を行った(司会:阪本栄理事)。
茂松 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
阪本 司会を務めます府医広報担当理事の阪本です。本年もよろしくお願いいたします。はじめに恒例の質問ですが、年末年始の過ごし方をお教えください。
自見 明けましておめでとうございます。昨年は皆様方の温かいご支援を賜り、政治家として一歩を踏み出すことができ、私にとって忘れられない1年となりました。皆様方のご期待に応えるべく、精いっぱい努めてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
年末年始ですが、勤務医時代は大晦日からお正月にかけて、ほぼ当直にあたっていました。帰省できれば、こたつでみかんを食べながら、のんびりと過ごします。お雑煮は1日に4杯食べることもあります(笑)。
阪本 お雑煮のだしや具材には特徴がありますか。
自見 実家では、「あごだし」を使います。鰤、丸餅、人参、青物の葉菜、ごぼうが入っていて、いい味が出ますね。
茂松 お餅は焼くと香ばしくて、更においしくなりますよ。ぜひ試してみてください。
阪本 子どもの頃になりたかった職業や、医師を目指したきっかけをお聞かせください。
自見 キュリー夫人に憧れていました。当時の研究が医学分野にも大きな影響を与えたことはご存じのとおりです。私も学者として研究に没頭してみたい、と漠然と考えていました。大学で国際関係学を学んだ後、医学部に再び入学したのも、自然科学への憧憬があったからだと思います。好きな科目は免疫学で、今でもサイトカインやシグナル伝達などに興味があります。
茂松 炎症性サイトカインの過剰な増加に関しては、難病との関連が指摘されていますし、病態解明の研究などは非常に大切です。
自見 そのとおりです。私の場合、医学部に学士編入しましたので、カリキュラムが4年に圧縮されていて大変ハードでした。部活に励む時間もなかったのですが、当時、母校の医学部長を務められていた黒川清先生の勉強会に参加したことが良い思い出です。恩師である黒川先生には、今でも色々とご指導いただいています。
阪本 その後、勤務医としてキャリアを積まれました。後輩の女性医師へメッセージをお願いします。
自見 これからは「その人らしさ」を追究しながら、「ありのままの姿」で働けるように変わっていくのではないかと考えます。医師としてのキャリアパスと同時に、女性としてのライフパスを描いてもらいたいですね。
茂松 妊娠・出産でキャリアを継続できなくなるのではなく、「立ち止まらない」環境づくりが求められます。議員活動の大きなテーマのひとつかと思いますが、しっかり取り組んでいただきたい。
自見 このほど、女性医療職の議員連盟を立ち上げることになりました。女性医師を取り巻く課題は医師会だけで解決できるものではありません。また、医療関係の各団体においても、深く掘り下げて男女共同参画、就労支援などの環境整備に取り組んでおられます。それぞれ話を伺いますと、共通の課題がある一方、なかなか劇的な変化につながらないことが分かってきました。医療職の女性をつなぐネットワークを通じ、課題を横軸で共有すれば、職場環境の改善に向けてより重厚な提言ができるのではないでしょうか。時代も後押ししてくれていますし、結果的に男性にとっても働きやすい環境に結び付くものと思います。
茂松 画期的な取り組みです。男女それぞれの良さや価値観を感じることができる社会づくりが望まれます。
自見 「その人らしさ」が追求できる職場環境づくりは、生きがいづくりにもつながります。今回の議員連盟の設立は、議員就任後、看護師に関する党内の小委員会に出席したことがきっかけでした。潜在看護師の問題などが議題に挙げられていましたが、看護師に限らず女性医師も同じ問題を共有していますし、現状では女性と職場のベストミックスが見つかっていないと感じました。一方で、男性医師も介護で休職する時代になっていますので、問題意識を共有し、次のステージに向けた検討が必要であると認識しています。
茂松 実際、男性医師の介護による休職は増加傾向にあり、病院にとって大きな影響となりつつあります。超高齢社会における課題でもありますね。
阪本 勤務医時代の医師会とのかかわりについてお教えください。
自見 家族や親戚に医師がいますので、医師会の存在はもちろん知っていましたが、勤務医として働き始めた当時は余裕がなく、医師会活動にかかわる時間がなかったのが本音です。虎の門病院に在籍してから、「小児科は特に地域連携が大切」ということで、同院の小児科部長と港区医師会の会合に定期的に出席するなど、医師会活動に関与するようになりました。
茂松 率直にお話しいただきましたが、私もそうでしたよ。勤務医時代は日常診療や自己研鑚、学会発表などに追われ、医師会にかかわる時間もあまり取れませんでした。また、医師会という組織自体もよく分かっておらず、世間で言われるマイナスイメージのように思っていた時期もありました。実際に医師会とかかわって、はじめて分かる部分がある。医師会があるからこそ、国民の皆様に適切な医療が提供できている――このことは強く伝えたいですね。
自見 そのとおりです。勤務医の傍ら、父の秘書として医師会幹部の先生方とお会いする機会をいただきました。その頃から医師会の大切さを強く意識するようになりましたね。そして、26年11月に日医連から推薦をいただき、選挙までの準備期間の1年半をかけて全国を4~5巡しました。この経験が私の大きな財産です。全国のあらゆる地域に医師会があり、行政と交渉しながら地域の医療と介護を支えています。これは「日本の宝」だと感じました。一方で、特に地方を訪れた時、「地域の疲弊――人口の減少と偏在」が日本に突き付けられた最大の課題であると強く認識しました。少し逸れますが、今回の参院選の選挙区では、鳥取・島根、高知・徳島で「合区」が導入されました。個人的な見解ですが、合区は日本にはなじまないのではないかと思います。都道府県というものが我々の中で浸透しており、行政や文化もこれを基本に動きます。合区はそれをまとめて代表を選びますので、地域の声が届きにくい。当該地域の方にとっては、とてもつらいことです。人口減少を含め、地方といかに向き合うかについて、早急に議論していく必要があります。
茂松 地域特性が失われていく、ということですね。医療提供体制、医療資源も地域により異なりますが、国の出す方針は画一的ですから、その点は我々がきちんと声を出していかなければなりません。しかし、全国の医療の現場を「自身の目で見てきた」という経験は大きな強みです。自見先生が、おそらく各地域が置かれている状況を一番ご存じなのではないでしょうか。我々も会合で色々とお話を伺う機会はありますが、実際に足を運ぶことは難しい。貴重な経験を国政に生かし、地域医療を守る取り組みに邁進していただきたいと思います。
自見 皆様方のおかげで、こうした時間をいただき、全国の状況を知ることができました。大きな役割をいただきましたので、しっかりと取り組んでまいります。
阪本 参議院議員に就任後、厚生労働委員会に所属されました。また、羽生田たかし議員(元日医副会長/日医連参与)が参議院厚生労働委員長に就任されました。
自見 国家予算の相当の部分が厚生労働関係ということもあり、数ある委員会の中でも厚生労働委員会は特に人気があります。私は日医連から国政に送り出していただきましたので、この委員会に属さなければ自身のフィールドが確立しませんが、ご存じのとおり、羽生田先生が既に所属しておられます。同一組織から2人が参画することは難しいと言われていました。しかし、医療福祉系の自民党比例候補者でトップの得票数であったことが考慮され、委員長には羽生田先生が就任し、私も委員として参画する運びとなりました。これは極めて異例のことです。組織代表がしかるべきポストに就く上でも、得票数が大切であることを痛感しました。
茂松 今回の選挙結果が大きく反映されました。やはり、集票力は大切な要素ですね。
自見 また、災害対策特別委員会にも所属しています。昨年4月の熊本地震の時、たまたま熊本に滞在していましたが、災害時における医療救護体制は非常に重要です。日医でもJMAT活動などを通じて被災地の支援にあたりますが、施策の更なる充実に向け、医療面を中心にお役に立てるよう努力してまいります。
阪本 参議院議員になられて半年ほど経ちましたが、生活面で大きく変化しましたか。
自見 激変しましたね(笑)。今のところ議員活動に専念しており、診察はできていません。「1年間を通じて動いてみないと全体的な流れが分からない」と先輩方からもアドバイスをいただきましたが、国会運営が安定しないと予定が非常に流動的になります。議員としての経験をきちんと積む時期であると考えています。
茂松 医療の現場や患者さんへの思いを忘れず、日々粛々と頑張っていただきたいと思います。
自見 議員になって、選挙区と比例区の選出では立場が大きく異なることが分かりました。比例区の組織代表は、「組織としての政策」があり、「組織としての結果」を如実に求められます。組織が抱える課題を解決すべく、「政治との架け橋」として国政に送り出していただいていますから、就任当初から複雑な調整が課されます。そういう意味では、日医副会長を経験された羽生田先生が国会に一緒にいてくださることは、非常に心強いです。抜群の安定感、存在感をお持ちで、とても頼りになる大先輩です。
茂松 医療をサービス業とみなす風潮が出てきた頃から、「消費」のように捉えられるようになりました。特に政治家の方には、「国民が健康な生活を営むことができるよう、医療に『投資』すべき」との考えを持っていただきたい。
自見 国会議員のほとんどは医師ではありませんから、私達が思う医療の大切さを同様には感じていただけません。その点で、私には「通訳」としての役割もあり、医療の現状や在り方について、丁寧に説明しながら理解を得るように努めなければなりません。「風邪など軽微な症状の場合には、医師にかからず自助にすれば医療費抑制につながる」――医療の現場をご存じない方は、こうした考えをお持ちになるかもしれません。重篤な症状が隠れている可能性、自己判断や受診の遅れによる症状の悪化などについてもきちんと伝え、必要な医療を適切に提供できる体制を求め続けることが必要なのです。外来や病棟で患者さんと直接、日常的に触れ合うのは、おそらく医療従事者だけでしょう。ご自身、ご家族など周囲の方が病気にならない限り、医療の現場を目の当たりにする機会はなかなかないものです。しかし、病気になった方の人生や社会生活に対する不安について、思いを巡らせていただきたい。私達が医療の重要性を訴えることは、ひいては国民の幸せのためであることが分かっていただけるはずです。
阪本 新たな専門医の仕組みについては、見直しの議論が続いています。
自見 議員として最大の関心事のひとつが、この「専門医の仕組み」についてです。私は新医師臨床研修制度がスタートした16年に医学部を卒業しました。「スーパーローテーション方式」の初年度にあたります。私を含む当事者である研修医だけでなく、研修先の先生方も地域医療への影響を懸念されており、現場がとても混乱していたことが印象に残っています。こうした経験を踏まえ、最も必要であると思っていることは「横断的な連携」です。医学部教育は文部科学省、初期研修は厚労省、専門医研修は日本専門医機構がそれぞれ所管していますが、シームレスにつながることで、真に医師のキャリアデザインを考えた制度設計となることを望みます。
茂松 おっしゃるとおりで、非常に大事なことです。
自見 新医師臨床研修制度が始まるまでは、医学部教育に臨床はそれほど入っていませんでした。しかし、制度導入以降、医学部での病棟実習の時間が増加しました。4年生終了時には、臨床能力に関するCBT、OSCEと言われる共用試験が導入されるようになるなど、医学部教育も少しずつ変わり、臨床がより多く入るようになりました。このため、臨床に触れている研修医は増えましたが、一方で、臨床研修のプログラムは根本的には変わっていません。この点も考慮し、カリキュラムを見直す必要があるのではないかと考えます。また、日本専門医機構の役員の方に強くお願いしているのは、「国民への説明責任」ということです。同機構は一般社団法人であり、「プロフェッショナルオートノミー」の精神に基づいて検討が進められていますが、今般の専門医の仕組みづくりは、医師の供給体制、国民への医療提供体制にも大きくかかわります。加えて、それぞれの専門分野だけで議論して進めるのではなく、関係の各方面と意思の疎通を図っていただきたい。これには、取得を希望する医学部生や研修医も含みます。新医師臨床研修制度もそうでしたが、制度に振り回されることのないよう、当事者の意見を取り入れてほしいと思います。
茂松 いずれにしても、国民に適切な医療が過不足なく提供できる仕組みが求められます。
自見 日本の一番素晴らしい医療提供体制のひとつが「かかりつけ医機能」であり、諸外国よりかなり進んでいると自負しています。日本の医師養成の仕組みは、若いうちに修業し、専門性を高めた後にジェネラルを深め、かかりつけ医として開業、また勤務医として地域医療に携わります。若いうちでないと専門性は極めにくいものです。こうした質の高い医療人が身近な地域にいるのですから、日本は臨床研究のレベルが高いのです。しかし、国によっては、卒業時に家庭医と専門医に分けられたまま交わらないところもあり、質や待遇を含め、医師が二層分化することになります。私見ですが、こうした仕組みは日本にはなじまないと考えます。現在、イギリスでは家庭医の専門性を強化するなど質の向上に努めていますから、日本では質の高い医師が開業している点で、かなり進んでいると言えます。
茂松 最近では、医学部を希望する受験生が多く、「医学部ブーム」と言われているそうです。確かに医師の仕事はハードですがやりがいがあります。しかし、「偏差値が高い」という理由だけで医師を目指すことには、正直、疑問があります。
自見 ですから、医学部教育においては「医の倫理」を身に付けることが何よりも大切です。一方で、医学教育のみならず、地域医療や医療経済について学ぶ機会を作っていただきたい。将来、医師として医療に携わる上でいずれも不可欠な分野です。また近年、公衆衛生人材が育ちにくい環境にあり、そのことを懸念しています。公衆衛生分野こそ、国の政策の中心に据えるべきではないでしょうか。これを推進することで国の進むべき方向性が見えてくると考えます。
茂松 医療を取り巻く状況が大変厳しい中での活動となりますが、お互いに責務をしっかりと果たしてまいりましょう。最後にひと言、お願いいたします。
自見 国民皆保険には、「リスクをみんなで共有する」「命に大きくかかわる病ほど、みんなで助け合おう」という側面があります。しかし、これを前提としつつ、今後は持続可能な制度設計を追求していくことが命題となっています。例えばフランスの場合、命にかかわらない軽微なものは自己負担が高く、重篤な病はフルカバーになるなど、濃淡をつけたものとなっています。大変難しい問題ですが、私自身、今後の医療提供体制については「継続性」を目標にすべきと考えています。もちろん、命にかかわらないかどうかは診てみないと分かりませんから、初期症状は医師が診察すべきですが、その後については、国民的なコンセンサスを得ながら制度設計していくことになるでしょう。その上で、現場にいる医療人自らが、「望ましい医療の姿」を積極的に提言していくべきです。私も、今後の医療、そして医療界のために、微力ながら力を尽くしてまいります。
茂松・阪本 本日はありがとうございました。