
TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

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府医ニュース
2016年10月26日 第2800号
大阪府医師会は10月1日午後、府医会館で「第38回大阪の医療と福祉を考える公開討論会」を開催し、約300人の府民が参集した。今回は「在宅医療ってなあに?――2025年、老後の医療を考える」がテーマ。各パネリストが見解を示しながら、在宅医療の現状や課題を探った。
加齢に伴い入院治療が必要になる可能性が高まるが、医療費抑制の観点からベッド数が削減され、在宅医療の推進が打ち出された。本日は在宅医療について理解していただく一方で、在宅医療を受けずに過ごせるよう、「できる限り自分で動くことが大切」ということも意識してほしい。
医療費亡国論から続く医療費抑制政策は、健康を守る専門家として懐疑的である。医療は消費ではなく、健康への「投資」であり、社会保障の重要性を国民が考えなければならない。病気が悪化すれば入院、退院後はかかりつけ医へ通院し、それが困難になれば在宅医療や施設へ入所するといった環境づくりが大切である。医師会では、府民が住み慣れた地域で安心・安全に暮らせるよう、健康保持増進に向けた活動を継続するので、一層の理解・協力をお願いしたい。
当日は、上田崇順・毎日放送アナウンサーの司会で開会。茂松茂人会長のあいさつがあり、前川たかし理事、原聡氏(原クリニック院長)、中原淳太氏(大阪府保健医療企画課長)、松井愛・毎日放送アナウンサーがパネリストとして登壇した。各パネリストは、それぞれの立場から、「在宅医療」が求められる背景や、その実情、家族の負担などについて見解を示した。
大多数は退院後にADLが低下した状態で在宅医療が開始されるが、自宅での療養で回復力が高まることも多いと指摘。ホームグランドである自宅には、自分の持つ能力を補完する機能があるとの見解を示した上で、医師同士・多職種間の連携が重要とした。また、患者の意思を尊重し、それを家族が共有することが肝要とする一方、「日々を充実させ、人生の最終章への覚悟を持っておくことも大事」と述べた。
自身が訪問診療した、1.もやもや病に起因する四肢麻痺2.外傷性脳挫傷3.前立腺がん末期――の症例を提示。近年は医療機器の進歩などもあり、多くのケースで在宅医療が可能になったとした。更に、看取りを含む在宅医療の現状を報告するとともに、家族の介護力や医療・介護の連携といった課題を指摘。その上で、状況を十分に把握している「かかりつけ医」が、事情を勘案して在宅医療を実践することが有効と訴えた。
高齢者数・人口推移などに触れ、10年後の医療ニーズを想定する必要があると前置き。大阪府地域医療構想の策定にあたっては、「在宅医療の需要が増加する」との予測がなされ、医療・介護・福祉サービスを含めた地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいると述べた。一方で、構想は「現状ベース」とし、今後の健康づくりの取り組みなどで変化する医療ニーズに対応する施策を検討すると加えた。
両親の介護を意識する年代になり、将来の医療や生活など、今から話し合っておく必要を実感すると言及。自身の親が体調を崩した際のエピソードなどを交え、在宅医療への知識を深めたいとした。また、社会が複雑化しているが、次世代が「生まれてよかった」と思える大阪になるよう、一人ひとりが意識し、考えることが大事と述べた。
中尾正俊副会長はコメンテーターとしてパネリストの意見を総括しつつ、松井・上田アナウンサーのやりとりにあった「費用」「期間」「住宅事情」などの疑問に回答。在宅医療では、費用を明確にしにくいが、標準的な入院の費用よりは高くなるとの見方を提示し、介護保険も利用しながら対応してほしいとした。また、介護をする家族の負担に触れ、「覚悟」が必要と強調。そして、思いが共有された時に「患者・家族を支える環境の整備が重要になる」とまとめた。
第2部では、映画試写会として「永い言い訳」(配給:アスミック・エース)を上映した。