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時の話題
府医ニュース
2014年12月3日 第2732号
超高齢社会を迎え、地域包括ケアシステムを構築する上で医療ニーズの高い中・重度要介護者への対応強化が求められている。平成4年の医療法改正で、長期の療養を必要とする患者に対する新しい病床区分として「療養型病床群」が新設された。長期の療養に適した環境整備の必要から、病床面積や廊下幅などを広くすることなどが規定された。その後、療養病床は高齢者人口の増加とともに増え続け、18年には38万床(医療25万床、介護13万床)に達し、高齢者の慢性疾患を中心とした入院医療を担ってきた。一方で、国は病床数が過剰であり、医療療養型と介護療養型医療施設との役割分担が曖昧であることなどの認識から、療養病床を15万床に削減する目標を掲げた。介護保険適用の介護療養型病床の新設は認めず廃止とし、介護療養型老人保健施設への転換を促進するための支援策として交付金を用意した。しかし、思うように転換が進まず、23年度末までの廃止が改正され、29年度末まで6年間の転換期限延長を認めた。
そのような中、厚生労働省は社会保障審議会・介護給付費分科会(以下、分科会)で27年度介護報酬改定に向けた論点として、介護療養型医療施設が担っている機能を改めて重視し、機能確保のための在り方および介護老人保健施設が在宅復帰支援機能・在宅療養支援機能を高める方策としての取り組みなどの検討を行うとした。11月6日の分科会では、介護療養型医療施設の新たな評価体系として「療養機能強化型介護療養型医療施設(仮称/以下、機能強化型)」が提案された。急性期病院の在院日数の短縮化が進み、病床数が減少している一方、在宅・介護施設での看取りの整備が遅れている現状を考えると、機能強化型は医療と介護のどちらも提供でき、ターミナルにも対応できる医療施設として期待される。しかし、多くの機能を担うことで医師の業務負担が増大し、現在、議論されている看護師が行う特定行為により補完すべきといった方向へ進むことが危惧される。
多死社会を迎えて看取り難民の増加が懸念され、在宅での看取りの環境整備が急務とされている。その実現のためには在宅医を増やすなどの医療提供側の対策のみではなく、家族の生活スタイルの変化、単身高齢者の増加など、患者側に配慮しなければならない問題も少なくない。
今回、介護療養型の廃止問題には言及されなかったが、今後、療養型病床の機能の明確化・強化が一層進むものと考えられる。