伯井会長あいさつ(概要)

 今年に入り火山噴火が相次いでおり、自然災害への警戒を怠ってはならない。韓国ではMERSの感染拡大が続いている。水際対策も重要であるが、検疫体制の強化だけで防ぐことはできない。関係機関との情報共有など万全を期すべきである。日本年金機構のウイルスメールによる情報流出の中、マイナンバー制度が始まろうとしている。利用範囲の拡大に向けた法改正案も出され、患者の診療情報を一元管理する医療番号の導入も検討されている。漏洩事故が起これば、医療データを含む究極の個人情報が流出する。いかに堅牢なセキュリティシステムを構築しても、サイバー攻撃も高度化しており、再考すべきと考える。国会では強引な審議の進め方が目立つが、国民の意見を謙虚に受け止めてもらいたい。
 5月17日、大阪市の廃止・分割構想の賛否に関する住民投票が実施され、大阪市の存続が決まった。府医では、院長名でのポスター掲示を市内の地区医師会長に依頼し反対を訴えたほか、大阪府歯科医師会・大阪府薬剤師会と会見を実施した。「影響が不透明な現状では、市民の健康や命は守れない」と、拙速は避けるべきと主張した。可決の場合、医療や福祉だけでなく、市内の地区医師会にも甚大な影響があったであろう。大阪市には、市民の目線で山積する課題に対処して頂きたい。
 医療保険制度改革関連法が5月27日に成立した。国保制度改革や後期高齢者支援金の全面総報酬制の導入は、現行制度を維持する上で必要と考える。しかし、患者申出療養は混合診療の拡大につながりかねない。安倍晋三政権の成長戦略の一環として規制改革会議から提案された経緯があるが、患者に制度の恩恵があるのかは疑問である。地域医療連携推進法人の創設については、営利法人の参入に道筋を付けかねず、動向を注視すべきである。
 政府は財政健全化の目標として32年度のプライマリーバランスの黒字化を掲げ、6月末には「骨太の方針」が策定される。財政制度等審議会や経済財政諮問会議など、医療関係者不在の中で社会保障費の抑制策が示されている。受診時定額負担や参照価格制度の導入、後発医薬品の使用割合の目標および高齢者の窓口負担の引き上げ、市販類似薬の保険外しなどが再び俎上に載せられ、解決済みの事項まで提言された。「骨太の方針」素案においても、地域医療構想と合わせ、都道府県ごとに水準を設定した医療費抑制のほか、後期高齢者に関しては、診療報酬の特例制度を活用し、診療報酬の地域間格差の設定まで検討することとしている。28年度の診療報酬改定も標的になり、医療の給付範囲の縮小を狙った政策論議が続くのは間違いない。安倍首相は「医療政策の基本は国民皆保険」と述べているが、議論では社会保障費をいかに抑制するかに終始している。
 昨年9月に逝去された経済学者・宇沢弘文氏は、社会的共通資本の重要性を強調するとともに、新自由主義に真っ向から反対し、TPPは社会的共通資本を破壊すると訴えられた。国民皆保険制度は社会的共通資本の最たるものである。政権には、国民の生命や健康増進を「国家的事業」と考え、最優先で取り組んでほしい。医師会は、日本の優れた公的医療保険制度を崩壊へと導くいかなる政策にも厳しく対峙し、粘り強く対応する。
 10月からは医療事故調査制度の運用が始まる。都道府県医師会には支援団体としての役割が求められているが、支援内容や運営費用などの課題がある。専門団体としての責務を果たすべく、大学や病院団体、学会、医会とも連携し、体制を整備していきたい。
 26年度の府医決算は、昨年度比で約2億円の財産が増加するなど、安定した決算額となった。行政からの財政支援は期待できず、最大限の経費節減を図っているが、今後も安定的な医師会運営に努めたい。また、財政再建を至上命題とするのではなく、府民の将来の不安を払拭し、明るく未来展望のある社会を実現できる府政・市政が施されることを期待したい。