TPP「予言の書」

府医ニュース 2012125 2629

 

副題を新自由主義経済下の日本への教訓とする、この書籍は丁度、3年前に出版された。1997年以降の急激な新自由主義的経済構造調整と金融開放がもたらした韓国社会の窮状が分析・報告され、それはとりもなおさず、我が国の「POST TPP」(TPP後)を予言するものとなっている。特に第3・4・5章は衝撃的であり、諸氏には是非、お読みいただきたいと願う(第4章ではISD条項および「間接収用」の概念を詳しく知ることができる)。

 

 さて、TPP同様、韓米FTAも、極めて「唐突に」登場したのだそうだ。そして、充分な情報や議論の機会が国民に与えられることのないまま、交渉が急速に推進され、いわゆる、例外条項も悉く譲歩させられた、というより、大統領以下、交渉にあたった韓国代表団は「締結自体が目標である」という立場であったという。これは正に野田佳彦首相の「ネガティヴ・リスト」に関する答弁内容を彷彿させる。

 かつて、急激な金融市場の自由化ゆえに経済危機に陥ったにもかかわらず、韓国はIMFプログラムにより、更なる自由化を強いられた。本来なら野放図な自由化に、制限を加えるべきであったのに、韓米FTAによって、自国の全面的開放と自由化(公企業の民営化、規制緩和)を貫徹させられると、筆者らは強く危惧している。

 

 現在、韓国における雇用環境は悪化の一途にあり、格差や不平等の深化が進み、自殺者も増え続けているという。「自由化の果て」を記した、この本を、果たして我が国の政治家は読んだのだろうか? 私達は、この書を正に「他山の石」とせねばならない。(猫)

 

「韓米FTAと韓国経済の危機新自由主義経済下の日本への教訓」 徐勝・李康國 編  晃洋書房 刊




TPP――巨大企業が国家を呑みこむまで

府医ニュース 2012229 2632

 

ジェーン・ケルシー編著「異常な契約――TPPの仮面を剥ぐ」(農文協刊)によると、米豪FTAによって、処方箋薬の卸売価格は3〜10倍に跳ね上がったという。従来、オーストラリアでは、PBS(医薬品支援制度)の下で、専門家による医薬品支援諮問委員会(PBSC)が、新医薬品の価格・効能を、これに対応する特許権が期限切れとなった安価なジェネリック医薬品と比較し、それに準拠してオーストラリア政府が医薬品の卸売価格を決定・管理するという「参照価格制度」を採ってきた。このPBSによる薬価管理の仕組みを、米国の製薬会社は「不当に低い薬価が、企業が知的財産権の恩恵を十分に受けることを妨げている」と激しく攻撃した。

 

 PhRMA(米国研究製薬工業部会)は緊密な「雇用関係」(謂わば、我が国の「天下り」に相当する)を通じて、USTR(米国通商代表部)に強い影響力を有しており、米豪FTAにおいて、この参照価格制度を骨抜きにしてしまった。すなわち医薬品に「F1類型」と「F2類型」という新たな分類方法が設けられ、PBSはF2類型の中でのみ有効であり、「他の薬剤とは互換性のない革新的な効能を有する」とされる薬剤はF1類型に分類され、PBSの対象外とされた(この結果、薬価が高騰した)。F1類型の評価を継続し続けるためには、効能に無関係な、わずかな塩基の置換などで、特許の延長を図ることも可能とされ、「リンケージ・エバーグリーニング(特許の『常緑化』戦略)」や「データの排他性の保護」などなど、その独占的・保護主義的手法は幾重にも重なって、特許薬の高価格の維持と独占的権利の強化を達成し、それは相手国の公的制度を破壊し尽しても、止むことはない

 

 さて、TPP交渉には、交渉文書を公表しないという「合意」があり、「協定発効後4年間、その内容は秘匿される」(!)という。知り得るのは「政府当局者」などの、極端に限定された人々のみであり、交渉の中身は徹頭徹尾、秘匿されたまま、国民には事後承諾のみを、隷属することのみを強いるものだ。秘匿のされ方は、ISD訴訟においても全く同じ構造で、「かくかくの訴訟があった」ということすら秘匿される仕組みになっている。

 

 TPPの破壊性・非倫理性はいくら過大評価しても、過大評価し過ぎることはない。因みに、ISD訴訟において、米国以外で勝訴を得た国家は皆無である。(猫)

 

TPPにおけるSPS@

府医ニュース 2012328 2635

 

菅直人前首相が高らかに「平成の開国」を宣言した時、私達にとってTPPとは、正に「突飛なプラン」であった。しかし、1970年代以降、日本企業との競争に連戦連敗の憂き目にあっていた米国は、80年代に入るや、企業の本業自体で競うのではなく、ルールや社会制度を自分達に有利に変更することで、競争に勝つという戦略(堕落)を選んだようだ。

 

 「天下りと天上がりのリボルビングドア(回転ドア)」により、大企業が、政府と癒着・一体化し、80年代末からの日米構造協議、90年代の日米包括経済協議、関岡英之氏の著作で広く人口に膾炙されることとなった年次改革要望書、11年以降は日米経済調和対話、そして、その集大成がTPPであり、決して昨日今日のことではないのだ。

 

 国家のアイデンティティとも言える様々な公的制度を「非関税障壁」として破壊し続ける暴挙は正に、「武力なき侵略」と言っても過言ではない。世界中の国々が理想とする我が国の公的国民皆保険制度を守り抜かねばならないのは当然として、更に私達医療者は、TPPの24の作業部会のうち、SPS(動植物検疫)についても、強い警戒心を持つ必要がある。

 

 BSEを初めとする種々の人畜共通感染症や、後述する理由による耐性菌の増加は、国民の健康にとって深刻な問題をもたらし得る上に、医療コストを押し上げることから、間接的に、国民皆保険制度の存続を脅かし続けるものとなるからである。(猫)

(本稿は4回に分けて連載を予定)




TPPにおけるSPSA

府医ニュース 201252 2639

 

外務省のサイト「WTO紛争解決制度」を見ると、2007年に我が国は、「りんご火傷病に対する検疫措置」(DS245)に関して米国との二国間協議に敗北している。

 

 火傷病とは、エルビニア・アミロボーラという細菌による植物の病気で、米国東部を起源とし、林檎や梨といった果樹林に広く感染し、まさに火傷の如く樹木を枯らし、果樹園を全滅させ得るため、果樹園を営む者にとっては死活問題である。訪花昆虫や風雨によって伝播され、感染力も強く、全世界で汚染を免れているのは、日本と豪州だけである。宿主植物の輸入時における発見が困難であることから、植物防疫法(昭和25年法律第151号)で輸入禁止植物の対象病菌として取り扱われている重要病菌である。

 

 輸入解禁を求める米国は、WTOの紛争処理機関に提訴するなど圧力を強め、日本は米国産りんごの輸入解禁について、譲歩を繰り返した揚句(当初は、米国内のりんご果樹園周囲に500bの緩衝地帯を設置すること等、といった条件だったという)、最終的に、@果物が火傷病の侵入していない指定園地で生産される、A輸出用の園地は火傷病に感染した木のないものである、B園地と周辺境界帯は1年に1回、幼果期に検査される、C火傷病に罹った木が見つかった園地は輸出用園地としての資格を失う――という条件を提示した。しかし米国側は、「表面病変のない生果実であれば、火傷病に罹った木から採られたものであっても、火傷病が日本に侵入するリスクがあるという科学的根拠はない」と主張し、これらすべてに異を唱えた。

 

 結局、日本はこの協議に全面的に敗北し、農林水産省は、米国側の要求を受け容れて「火傷病防疫指針」を1012月に制定、輸入解禁に至った。次号に続く(猫)




TPPにおけるSPSB

府医ニュース 2012516 2640

 

火傷病は植物固有の病気で、ヒトには感染しないが、発生した場合、感染拡大を予防するために、ストレプトマイシンを広範に空中散布しなければならない。つまり人体向けと同じ抗生物質を農業用に用いるようなことをすれば、ストレプトマイシン耐性菌の発生率が増加してしまい、とりわけ結核治療に深刻な影響を及ぼすことが推測されるし、病原体の耐性獲得は治療効果の減殺、あるいは代替案として新世代のニューキノロン系薬剤などの頻繁な投与が不可避となり、医療コストを膨大なものに押し上げてしまう。(現行の低廉な標準治療は無効になってしまうのだ!)

 

 この「火傷病検疫交渉」において、厚生労働省や結核治療の専門家は「蚊帳の外」だったのだろうか? 他の1・2類感染症が最近10年間ほとんど発生していないのに対し、結核は国内で毎年2万数千人が新規に登録され、その4割が感染源となる喀痰塗沫陽性患者である。

 

 結核高蔓延の戦前生まれの世代がいなくなっても、関節リウマチ等での免疫抑制治療、糖尿病、HIV、臓器移植、血液透析といった医療の様々な局面で、結核は増え続けることが予測される。更に2006年にWHOやCDCは、超結核(事実上不治の超多剤耐性結核:XDRTB)が日本を含む28カ国で確認されたと報告している。

 TPP以前の事例である「火傷病検疫交渉」の敗北は、医療の分野にも重大な禍根を残したと言え、この分野でのTPP交渉についての警戒を強調する所以である。次号に続く(猫)




TPPにおけるSPSC

府医ニュース 2012530 2641

 

我が国と異なり、米国は、農業・畜産の分野で抗生物質を頻繁に用いており、養豚についての比較であるが、1種以上の抗生物質耐性を有する大腸菌を保菌する豚は、豪州では19.2%であったが、米国では62.6%であったとの報告がある。また、偽膜性大腸炎を起こすクロストリジウム・ディフィサイルは人畜共通感染症であるが、北米や欧州で強毒性の多剤耐性菌が多く、かつヒトに感染した場合、英国では毎年2千人前後の死亡者が見られる。一方、この耐性菌の稀な豪州では死亡者は未だに現れていないという。それでも、抗生物質耐性の問題が、豪州の保健関係予算にもたらしているコスト増は、日本円に換算して毎年、約225億円に上ると推定されている。しかも、この金額は国の財政支出への直接的な費用のみであり、治療中に労働できないことによる所得の減少などの間接的なコストは含まれていないとされる。

 

 一方、我が国では、関岡英之氏によると、規制・制度改革分科会では「欧米で広く使用が認められており、国際的必要性が高いもの」については「企業の申請がなくとも、国が主体的に指定に向けた検討を進める」という方針の下、ナタマイシン(国内では使用されていない抗真菌剤)を2005年に防カビ剤として認可していることを明らかにした上で、「日本の企業から上がった申請ではない食品添加物の認可を、国が主体的に認めるとは、一体どういうことか? 一体、誰のための政府なのか?」と強い疑義を発している。TPP交渉において、これら抗生物質・抗菌薬・農薬といった食品添加物に関する我が国の基準が(非関税障壁として)、「国際基準という、下方への協調」(downward harmonization)という改悪を迫られることは想像に難くない。

 

 最後に、BSEであるが、米国は肉骨粉の使用こそ止めたものの、依然として反芻動物の血粉や血小板廃棄物を家畜向け飼料として使用しており、仔牛にも血液が給餌されているという。

 

 動植物検疫・食品安全の問題にも、かのラチェット規定は適用される。TPPは多岐に及び、それぞれが複雑に関係しているため、医学のみならず、農学・獣医畜産学といった諸分野からの、学際的な判断が求められる。(猫)




TPPにおける薬剤適応症の追加について

府医ニュース 201281 2648

 

 NHK「ニュースで英会話」に、このような「例文」を見つけた。Intellectual property delivers the innovation to the marketplace.(知的財産権は、マーケットにイノベーションをもたらします。)諸氏は『この意味するところは何?』とお思いにはならないだろうか?

 

 TPP関連の「マスコミ報道」は、市場開放、自由競争、機会平等といった言葉で、TPPが悪しき因習や障壁を根絶する「正義の味方」であるかのように謳う。しかし、知的所有権に関するTPPの内容を正当に報道した内容はほとんど見当たらない。ところで、特許取得に関して、関岡英之氏によると、世界中の国々が「先願主義」(出願の早い者勝ち)を採用する中、米国のみが「先発明主義」を標榜しているという。しかし、発明した日時を客観的に立証することは極めて困難なので、米国では特許裁判の場で決着を付けるというのだ。膨大な時間と莫大な費用をかけて!これは、ISD訴訟にも通ずる発想である。加えて米国は特許保護対象の範囲を限りなく拡大させる立場を採る。「米国の知的財産権に関するルールは、イノベーションをもたらすどころか、途上国を永遠に支配するツールである」と、ブラジルやインドなどの途上国は激しく反発している。

 

 例えば、アスピリンは出た当初は鎮痛剤として用いられていたが、今では抗血小板剤として投与されるようにもなった。このような新たな使用方法(追加発明)を、米国は特許の対象と見なす。しかし、医薬品の組成がいったん許可された後、違った条件での処方について一度以上特許化されると、医薬品のコストは増加し、最終的には医療コストが増大する。しかも、米国は特許期間の永続化までを視野に入れている!(特許の常緑化戦略)

 

 他国に対しては国際基準の採用や制度の透明性を求めて止まない米国は、実は最も強固な保護主義国家でもある。(猫)




TPPにおける「知的財産権」

府医ニュース 201295 2651

 

宇沢弘文氏の書かれた小論の中に、興味深いエピソードが紹介されているので、そのままご紹介したい。

 

 「アメリカの製薬会社が開発する新薬の約75%は、次のような形で作り出されていると言われている。アメリカの製薬会社は、数多くの専門家をアマゾンの熱帯雨林の周縁に居住する少数民族の部落に送って、その長老あるいはメディシンマンを訪ね、伝承的に受け継がれてきた医療の技術を聞く。それは、アマゾンの熱帯雨林の中に生息する動植物、微生物や、土壌、鉱物などについて、そのような材料を、どのような疾病、傷害の治療に、どのように使ったらよいか、についてである。長老あるいはメディシンマンの中には、ひとりで5千種類におよぶ治療法を知っている人もいると言う。専門家は、これらのサンプルを本国に持ち帰って、ラボラトリーで化学分析し、人工的に合成して、新薬として売り出すと言うのである。近年、アメリカの製薬会社の多くは巨大な利潤を享受しているが、そのかなりの部分が、このような形で行われている新薬開発によるものであると言われている。そこで、ブラジル政府は、アメリカの製薬会社がアマゾンの長老達に特許料を支払う制度を新しく作った。ところが、アマゾンの長老達は、こぞって、アメリカの製薬会社から特許料を受け取ることを拒否したのである。自分のもっている知識が、人間の幸福のために使われることほどうれしいことはない。その喜びをお金にかえるという、さもしいことはしたくないとの理由からであった。」

 

 「あくどく利潤を追求して止まない資本主義的企業の在り方」と「アマゾンの長老達のすがすがしい人間的な生き方」との、鮮烈な対比が強く印象に残る。

 

この逸話からも分かることは、TPPに謳われる知的財産権の米国流ルールは、いったん受け容れれば、単なる経済上の損失に留まらず、最終的に、その国の人心をも荒廃させるものだということである。TPPとは何か? 肝心な情報はことごとく秘されたままのそれは、国家間の条約の形をとった多国籍企業による国家解体マニュアルに他ならない。(猫)




My Stroke of Insight

府医ニュース 20121114 2658

 

テレビでTEDカンファレンスを紹介する番組があり、この時、女性神経解剖学者ジル・ボルト・テイラーの表題のプレゼンテーションが放送されたのですが、あまりに面白かったので、彼女の同名の著書をペーパーバックで読んでみました。 そうすると、脳卒中を発症後、どんどん機能不全が拡大してゆく状態を、意識が混濁する中で、冷静に分析しながら、責任病変を探す彼女は、やがて呼吸中枢に影響が出るのではないか? と思い至り、愕然とします。全失語状態に陥り、それでも必死で助けを求めるのですが、途中で、こんなことまで思いついてしまうのです。

 

 「私のHMOでは、治療費がカバーできないかもしれない!」。映画『SiCKO』を持ち出すまでもなく、ハーバードの少壮気鋭の研究者が生命の危機に瀕して、こんな心配をしなくてはならない、というのは日本人の感覚からすると信じられないものです。

 

 さて、市場経済原理主義とシカゴ学派の祖であるミルトン・フリードマンは、レーガノミックスの理論的根拠となった人で、水爆実験の成功時には同僚とシャンパンで乾杯し、「ベトナムに水爆を落とすべきだ」と進言し、「それでは、何百万人もの人が殺され、社会も自然も破壊されてしまう」と反駁されると、「自由を守るためには、共産主義者が何百万人死んでもかまわない!」と言い放ったとされます。講義が上手く、学生に大変人気のある経済学者だったそうですが、TPPに参加するということが、「投資の『自由』が人命より尊重される」という論理、非倫理を、医療制度の根幹に据えることに他ならないということは、いくら強調しても、決して強調し過ぎることはありません。このことを国民すべてに伝える努力を医師会は怠ってはならないと思っています。(猫)




 

亡国へのトラップ

府医ニュース 20121212 2661

TPP報道の変化

 「週刊新潮」12月6日号に掲載された記事「結局『TPP』は日本に得なのか! 損なのか!」では、国民皆保険崩壊の危険性が、かなり詳しく報じられた。週刊誌で、ここまで詳しく報じたものは今までになかったし、総選挙前に精度の高い記事が出たことは有意義なことだと思う。

 この米国側の要望書の内容については、半年前に「選択」4月号でも、同じく消費者保護活動を行っているアメリカのNPO団体が入手し、リークしたものとして紹介された。ほとんど同時に、4月上旬のNHKのニュースでは、渡米した大越健介キャスターが、ホワイトハウスを背景に、「オバマ大統領がTPPに意欲的な野田首相を非常に高く評価している」と紹介しつつ、「(TPP参加を)ちゃんとやる気があるのか? (米国側に)日本は覚悟を求められています」と結んだことを思い出す。

 さて、米国国内では実に9割以上の国民がTPPに反対しており、結果として、前出のようなリークが起こるとのことであった。以下、一部を引用する――「このほど、米国のNPO団体が入手した現在進行中のTPP交渉の機密文書の内容が明らかになった。そこには、米国の大手製薬会社の要求が列挙されており、『先発医薬品メーカーが治験データの独占権を持ち、ジェネリックを売りたい後発メーカーは治験を再度行なう』『日本の薬価を決める委員会に米国の製薬会社を参加させる』『手術の方法も特許にすること』など、米国側の戦略的な交渉の一端がつまびらかになっている」。

 

 米国は、薬価を高騰させ、莫大な利益を絞り取った後、財政的に国民皆保険が維持できなくなった時点で「日本の決断」により国民皆保険を放棄させる、あるいはISD条項により「公的医療保険を経済活動を阻害する要因」として訴え、廃止に追い込む。そして民間保険会社中心に米国型医療制度を展開するという戦略であろう。週刊新潮が述べるように、正に「亡国へのトラップ」である。(猫)




TPPそして物質特許の追加発明の取扱い

府医ニュース 201326 2666

 

メトトレキサート(MTX)は、抗がん剤そして抗リウマチ薬として広く用いられていますが、薬剤自体は1940年代に開発された、かなり古い薬剤です。その1錠あたりの値段(薬価)ですが、2_グラム錠が299円50銭、2.5_グラム錠が4130銭(いずれもファイザー社製)となっています。「おや?」と思われるでしょうが、書き間違いではありません。前者の商品名が「リウマトレックス」、後者のそれが「メソトレキセート」です。製造原価に変わりもない、全く同一薬剤なのに?! むしろ量は多いのに?!!

 「理由は何か?」と言えば、ルールの問題「適応症」に尽きます。リウマトレックスの適応症は「慢性関節リウマチ」、メソトレキセートの適応症は「急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、絨毛性疾患(一部省略)」となっており、医師が患者負担を考えて、「メソトレキセート」を慢性関節リウマチの患者さんに処方しようとしても許されません。だいぶ前にアスピリンや抗HIV薬について本欄に書いたことですが、米国では、このような既存の薬剤の新たな使用方法を「追加発明」とし、膨大な特許料が発生します。つまり、その差を顕したものが、この薬価の差です。

 

 日本リウマチ学会がそのホームページにおいて、「メソトレキセート2.5_グラム錠は関節リウマチに対しての適応はなく、適応外使用となってしまいます。また、適応外使用に対しては、保険診療上、査定の問題も出てきますし、重篤有害事象が発生した際に医薬品医療機器統合機構の医薬品副作用被害救済制度の対象ともなりません」と脅し、もとい注意喚起しているのは皮肉なことです。

 

 医療費の増加を「低出生率と高齢化」といった人口構造の変化という観点から専ら捉えがちですが、このような視点も不可欠ではないでしょうか?(猫)