音楽の楽しみ方

　音楽を趣味にする方は多いでしょう。ご自身で楽器を演奏したり、演奏会でプロの演奏を楽しむ、あるいは、オーディオ機器に凝り、ＣＤやレコードを収集し、自宅で鑑賞する。近年ではユーチューブもあります。
　私も、そういった音楽好きの一人ですが最近、新たな楽しみ方が増えました。それは著名な音楽家による「公開レッスン」の聴講です。ステージ上で受講するのは、音高や音大の学生や、プロとして活躍し始めた人で、すでに「技術的に完成した方」ばかりです。まず受講者が課題曲を一通り演奏したところで、講師の解説・指導が始まります。
　作品成立の背景、歴史、哲学、宗教といったことにも言及しつつ、何故、そのように演奏すべきなのか、理詰めの解説が進みます。この蘊蓄も非常に興味深い。そして指導が加わる度に、受講者の演奏が次第に磨き上げられてゆくのです。内部の陰影が増し、曲全体の輪郭がクリアになり、演奏に深みと豊かさが増してゆく感じ。このプロセスを目の当たりにするのは、とても面白い。演奏会など、曲を「通し」で味わうのと違い、曲の中のいくつかのパートを切り取る形で繰り返し聴く作業は、聴き手の耳も育ててくれるように思われます。
　小規模のホール、講師もジーンズにポロシャツといったラフな服装で、コンサートやリサイタルとは趣きを全く異にします。聴講しながら、楽譜を読み、メモを取る……音楽の楽しみ方が、また増えました。
（猫）