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府医ニュース

2023年3月29日 第3031号

 ◆「先日、風呂場で転倒して動けなくなり、夫に助けてと叫んだがしばらく気付いてもらえず危ない目にあった」と患者の体験談。事なきを得たようだが、ヒヤリとする日常の危険である。夫が難聴のせいで、普段の大声での会話にもストレスがあるという。
 ◆実際、診療の場で老人性難聴の患者が増えている。集音器を使ったり、筆談をしたり、最近ではスマホの音声文字変換ができる聴障者支援アプリも使用している。時間を要するだけでなく満足な診療に及ばないことも多い。難聴の患者さんも不便をかける診療に申し訳なさそうで、高価な補聴器があまり役立たない不満を言うこともしばしばである。
 ◆後期高齢者では40%以上が難聴を抱えており、生活の質の低下に加えて、認知症の発症リスクが高まるとされる。老人性難聴は超高齢社会においてこのまま看過できない重大な問題との認識が必要のようだ。
 ◆老人性難聴に今のところ根本的治療法はない。日常生活の不便、危険に対して、医療に限らない社会的支援も進めなければならない。(誠)