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医師・医療関係者のみなさまへ

第2回認知症サポート医フォローアップ研修

府医ニュース

2023年3月15日 第3030号

認知症と精神疾患との鑑別を解説

 大阪府医師会・大阪府・大阪市主催による令和4年度第2回認知症サポート医フォローアップ研修が1月28日午後に開催された。当日は府医会館とウェブによるハイブリッド形式で実施され、認知症サポート医のほか、認知症地域支援推進員や医療従事者など約370人が参加した。
 冒頭、中尾正俊副会長があいさつ。「認知症基本法案」が次期通常国会で成立すれば、内閣に認知症施策推進本部が設置されると明言。認知症になっても誰もが安心して暮らせる社会の実現に向けた取り組みが進められるとの認識を示した。その上で、認知症サポート医や認知症地域支援推進員、認知症疾患医療センターが緊密な連携を図り、さらなる体制整備が必要になるとして協力を呼びかけた。
 まず、橋本衛氏(近畿大学医学部精神神経科学教室主任教授)が「認知症と精神疾患との鑑別」と題して講演。うつ病・自閉スペクトラム症・注意欠如多動症と認知症の鑑別について症例を挙げながら解説した。特にうつ病は、高齢者に多い疾患であり一部の症状が認知症と共通していることから鑑別が難しく、併存も少なくないと指摘した。また、前頭側頭型認知症については認知機能障害が目立たず、人格・行動面の変容が中心となるため、精神疾患等の鑑別が難しいと説示。一つの症状にとらわれず、その他の症状の有無などによって鑑別する必要があるとした。
 引き続き、池田学氏(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室教授)が「新しい時代の認知症医療」をテーマに講演を行った。池田氏はまず、「認知症初期集中支援チーム」について概説した。複数の専門職が認知症を疑われる人や認知症本人およびその家族を訪問し、初期支援を包括的に行い、自立生活のサポートをするチームであると言明。それらサポートの実態や困難事例を提示するとともに、同大学でまとめた「事例集」を紹介した。さらに、昨年末に継続審議となった認知症疾患修飾薬について言及。アルツハイマー病の原因となる老人斑を脳から取り除き、進行を抑える効果があるとして、従来の症状改善薬とはメカニズムが異なると説明した。一方で、症状がなくてもアミロイドが脳に蓄積された段階で告知し治療を開始する必要があることや薬価が高額、対応可能な医療施設の偏在などの課題もあると指摘した。