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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

マイナカード保険証化と給付の平等性

府医ニュース

2023年3月15日 第3030号

トラブル時の備えも考えよ

 政府は健康保険証とマイナンバーカードが一体化した「マイナ保険証」を持たない人に「資格確認書」を発行すると発表した。報道では、資格確認書で受診する場合は患者の窓口負担を高くする方針。いくつかのメディアでは、任意であるマイナ保険証を持たない患者が不利益を被るとの指摘がされている。
 窓口負担の不平等性について簡単に解説すると、これは本年4月から12月の9カ月間適応される「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」とその特例措置のことを指している。特例措置における初再診料の加算は次のとおり。
 (1)マイナ保険証利用なし初診:6点(加算1)再診:2点(加算3)
 (2)マイナ保険証利用あり初診:2点(加算2)再診:加算ゼロ。マイナ保険証を使用しなければ、初診も再診も加点される仕組みとなっている。
 算定に係る施設基準は、①オンライン請求を行っている②オン資確認を行う体制を有している③院内の掲示(見やすい場所)およびホームページ等に(A)オン資確認を行う体制を有している(医療機関等向けポータルサイトに運用開始日を登録)(B)当該医療機関を受診した患者に受診歴、薬剤情報、特定健診情報その他必要な診療情報を取得・活用して医療を行うと掲示している――この3つである。算定要件には、初診時問診票に関する様式(別紙様式54)があるので各自確認されたい。
 当院は、もともと施設基準③(院内掲示等)を満たさないため算定をしていない(窓口負担差なし)。逆に通信トラブルなど資格確認ができない際のバックアップとして必ず従来の保険証を持参することと掲示している。大阪急性期・総合医療センターで起きた大規模なシステム障害の報道に接すれば、このような対策を考えるのは当然であろう。
 顔認証カードリーダーを申し込む際に利用した「オンライン資格確認・医療情報化支援基金関係医療機関等向けポータルサイト」には、故障やエラーの際のトラブルシューティングが用意されている。そこには、オン資確認でなんらかの原因で保険証資格の確認ができなかった場合、まずは「不具合が解消するまでは、患者に健康保険証を出してもらい、健康保険証で資格確認」、そして、保険証を保持していない場合は、最大10割の窓口負担か、保険証を忘れた際に各医療機関等で行っている個別運用で対応するとされている(令和5年3月6日現在)。
 現時点では、政府の方針として、従来の保険証の提示が備えとなっている。もし、保険証が廃止されたら資格確認書がバックアップになるのだろうか。窓口負担が支払えない患者のためにも、資格確認書はマイナ保険証の保持者にも予備として発行可能とすべきだ。予備で所有することを認めなければ多くの医療機関で混乱が起きるだろう。そもそも、現行の保険証が保険資格の確認書なのだ。マイナカード推進のために医療の仕組みを変えること自体がナンセンス。もっと声をあげよう。(葵)