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医療問題研究委員会

府医ニュース

2023年3月15日 第3030号

 大阪府医師会では、医療問題に対する研鑚を深め、将来の医師会を担う人材を育成することを目的に「医療問題研究委員会」を設置している。令和4年度第4回となる委員会が2月8日午後、府医会館で開催された。今期は前半で府医会長および副会長による講演を順次実施しており、この日は澤芳樹副会長が、「循環器医療のみらい」と題して講演を行った。

循環器医療の展望など示す
澤副会長が講演

 当日は栗山隆信理事の司会進行で始まった。冒頭、澤副会長は大阪大学外科学講座141年の歩みを紹介した。特に、昭和31年に日本で第一例となる「人工心肺による開心術」に成功したことは画期的であったと振り返った。
 心臓血管外科設立後は、①低侵襲心臓手術②重症心不全治療③心臓大血管手術――の三つを発展させることに軸足を置き挑戦してきたと明かした。平成19年には、循環器内科と心臓血管外科の融合領域を新しく構築。最近のトレンドである「ハートチーム」による循環器疾患治療の始まりとなったと説明した。翌20年にはハイブリッド手術室を設置。現在では世界のスタンダードとなった「経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)」を一早く導入し、普及に貢献してきたと胸を張った。

再生医療で重症心不全を予防

 続いて、同大学の心臓血管外科手術数の年次推移を提示。18年に363件であった手術数が、30年には1246件と飛躍的に伸びるとともに、死亡率も4.3%から0.3%まで向上したと述べた。一方、重症心不全治療の中心は補助人工心臓。ドナーは増えず、心臓移植までの待機期間は5年、移植到達率は6割にも満たないとの現状が示された。患者のQOL保持への手段として、再生医療を展開した。
 澤副会長が主導的に取り組むのは、「自己骨格筋芽細胞シート」。19年に臨床試験を開始し、28年には「ハートシート」として保険診療が始まった。また、20年からは山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所名誉所長とともに「iPS細胞由来心筋細胞による心筋シート」の共同開発にも取り組んでいる。現在までに7例の移植を行い、職場復帰を果たすなどQOLの向上につながっていると力を込めた。さらに、「再生医療の早期介入によって重症心不全を予防することが、今後の新しい循環器医療になるだろう」と展望を語った。
 最後に、令和6年に大阪帝国大学の跡地でスタートする「未来医療国際拠点」、および自身が院長を務める「大阪警察病院」について紹介。同病院は7年から第二大阪警察病院と統合し、両院の強みをあわせた新病院に移行するとした。また、集中治療室を増床、救急受け入れは年間1万件に増やし、救急医療体制の拡充を目指すと述べ、医療が進化する中で少しでも貢献していきたいと未来を見据えた。