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時事

厚労省「COVID―19診療の手引き」が改訂

府医ニュース

2023年3月1日 第3029号

高齢者・小児の管理など更新

 2月10日、厚生労働省「COVID―19 診療の手引き第9.0版」が公表された。昨年10月5日の第8.1版から、約4カ月ぶりの改訂となる。各種データの更新とともに、「重症度分類とマネジメント」の項では、オミクロンの感染拡大で課題となっている「高齢者の管理」と「小児の管理」が独立して追加された。また「院内感染対策」も見直された。なお、オミクロンは、B.1.1.529系統とその亜系統および組換え体すべての総称である。
 高齢者でのCOVID―19の特徴に、併存疾患が多い、非典型的な症状を示す、ときに炎症反応が強く出現することを挙げ、若年者と比較して臨床像が異なり、重症化リスクが高いとしている。また、消化器症状による摂食障害などから容易に脱水や栄養障害を来す。急性期の治療に加え、廃用予防や合併症予防といった機能維持を目標とした適切なリハビリテーションも並行して早期に実施することが必要である。そして特に重要なこととして、二次性細菌性および誤嚥性肺炎併発に対する考慮を示し、呼吸不全を認める場合には、単純に中等症Ⅱのウイルス性肺炎と考えずに、二次性細菌性肺炎やうっ血性心不全の可能性を常に留意するとしている。
 小児については、感染例の増加に伴って死亡報告も増加、その約半数は、基礎疾患のない生来健康な児が占めている。死亡例の症状は、呼吸器以外の症状のうち、悪心・嘔吐(46%)、意識障害(42%)、痙攣(36%)、経口摂取不良(22%)などの割合が高かったことから、全身症状の出現に注意が必要としている。また、発症から心肺停止および死亡までの日数は、中央値が各々2.0日、3.0日であり、1週間未満の症例が各々81%、75%を占めたことから、特に発症後1週間の経過観察が重要とした。
 さらに、複数臓器に強い炎症を認め、川崎病に類似した臨床像を示す「小児多系統炎症性症候群(MIS―CあるいはPIMS)」について注意喚起を行っている。典型的には、罹患後2~6週目に、高熱や消化器症状と前後して、血圧低下、ショック、心不全を呈し、しばしば発疹や眼球結膜充血、口唇・口腔粘膜の発赤やイチゴ舌、指趾の発赤を伴う。患者の22~64%が、川崎病の診断基準を満たすとのことである。
 院内感染対策の項では、日本環境感染学会による改訂版対応ガイド(1月17日公開第5版)において、飛沫・エアロゾル感染対策を重視し、接触感染対策は従来より緩和されたとして、同ガイドも参考にするよう勧めている。遺体については、国のガイドライン改訂に基づき、適切な感染対策により通常の遺体と同様に扱うことができ、前回の手引きまで求められていた、全体を覆う非透過性納体袋の使用は、体液漏出リスクが非常に高い場合に限定してよいとされた。
 感染症法上5類への段階的移行が模索されている折、地域の現場においても、今一度、最新情報を確認しておきたい。なお、厚労省の手引き、環境感染学会による対応ガイドとも、各々のウェブサイトからダウンロードが可能である。(学)