TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

教育現場でのマスク着用緩和案について

府医ニュース

2023年2月22日 第3028号

一律の対策ではなく個々の判断で

 政府は、令和5年5月8日から新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の感染症分類を2類相当から5類へ変更することを表明した。2月10日には、学校現場でのマスク着用は求めない方針を発表。基礎疾患などがあり、マスク着用を希望する児童・生徒への配慮は要請するとした。卒業式や入学式は3月半ばを待たず、マスクなしで迎える見通しだ。
 現在、文部科学省および厚生労働省のマスク着用基準は、①2歳未満の乳幼児のマスク着用は原則不要で推奨しない②2歳以上の就学前児は距離にかかわらず一律にマスク着用を求めない。着用させる場合は、周囲の大人が子どもの体調に十分注意する③就学児(小学生~高校生)は、屋外では近距離で会話する場合を除いてマスク不要④屋内で距離が確保できほとんど会話をしない場合は、マスクは必要ない⑤体育の授業はマスク着用は必要ないが、地域の感染状況や距離を確保するなどの対策を考える――とされる。
 保育士はマスクをしており、言語獲得期の3歳児に「『ぱぴぷぺぽ』は唇をつけるんだよ。言ってごらん」と促しても子どもは口元が見えない。顔の表情も分からず、情緒面の発達への影響が危惧される。東京大学発達保育実践政策学センターの野澤祥子氏によれば「乳幼児は、相手の口元を見る時期があり、言葉の発達につながっている」とし、発達上のマスクの弊害を指摘する。米ブラウン大学の研究者は、「コロナが流行した2021年は11~19年に比べ、3歳未満の幼児の言語とそれ以外の認知力が大幅に低下していた」との論文をまとめている。
 一方、学校でのマスク着用がコロナ感染者数抑制などに効果があるとの研究成果をハーバード大学のグループが発表した。マスク着用を義務とした学校と着用を解除した学校で、子どもと教職員合わせて約34万人について感染状況を比較。その結果、約3カ月半の間に、感染者数が着用解除した地区は1千人当たり134.4人に上ったが、着用義務を続けた地区は66.1人であった。研究グループはマスク着用で子ども達の学習や発達が妨げられる明確な証拠はなく、感染拡大の際には、有効な手段と結論付ける。
 政府はコロナの5類への見直しと同時に、「屋内でのマスクは原則不要」との見解を発信したが、一律の対応をするべきではなく、個々の判断に任せるべきである。就学前児と就学児とで対応を変えるのは当然のこととして、学校現場で免疫系が弱い子どももいる中で、感染させないように配慮することが必要である。地域の感染状況、児童・生徒の毎日の検温等の体調管理も学校現場で求められる。今、日本ではマスクをしていない人が気まずく感じるが、今後はマスクをしている人がそうならないように啓発する必要があるだろう。