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小児在宅医療に関する研修会で課題など共有

府医ニュース

2023年2月22日 第3028号

 大阪府在宅医療総合支援事業の一環として、大阪府医師会は「小児在宅医療に関する研修会」を1月21日午後、府医会館で開いた。この模様はウェブでも配信され、約80人が聴講。小児の医療的ケアやレスパイトケアによる保護者支援などを共有した。

レスパイトケアの推進が重要に

 小田真氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、はじめに前川たかし理事があいさつ。医療技術の進歩などに伴い、常時医療処置やケアが必要な「医療的ケア児」は増加傾向にあり、家族の負担軽減への支援が喫緊の課題だと述べた。一方で、一時的な預かりにより介護者を支援しているのが「レスパイトケア」とし、保護者らが安心して在宅介護を継続するためには必要な取り組みだと強調した。さらに、レスパイトケアには、「ケア児の自立をサポートする側面もある」とし、多くの医療機関で推進することが望まれると加えた。そして、本日の研修会が今後の小児在宅医療の参考になればと期待を寄せた。

家族の心身の負担を軽減

 続いて、宮沢朋生氏(堺咲花病院小児科部長)が、「医療的ケア児の在宅医療とレスパイト入院」と題して講演した。まず、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の施行により、医療的ケア児が広く認知されるようになったと前置き。本人・家族が地域社会の中で生活するための支援が求められており、在宅医療の本質はQOLの向上との見方を示した。
 次に医療的ケアが必要な原因は、分娩異常や低出生体重など出生時に多く、長期的なケアが必要と説示。また、医療的ケア児は移動や排泄、食事に介助を伴うことも多く、介護者の心身の負担は大きいと語った。
 宮沢氏は実際の印象として、母親がケアを担っているケースがほとんどであり、社会生活の制限や睡眠不足などが見受けられると指摘。共働きが困難で、ケアに必要な費用が家計を圧迫するといった状況も生じていると憂慮した。一方で、▽通所サービス▽訪問看護▽学校▽ショートステイ▽レスパイト入院――などのレスパイトケアが、介護不能となる事態を未然に防ぐ助けになると主張。特にレスパイト入院は、緊急時の対応や医療依存度の高い小児の受け入れも可能であり、介護者が安心して休息できると説いた。あわせて、家族が子どもを預けることに「負い目」を感じないよう、医療者は対応に気をつけてほしいと促した。

レスパイトの課題

 レスパイト入院は家族の支援にも有用としながらも、空床状況やケア方法が希望に添えないなどの弱点もあると言及。さらに、複雑な医療的ケアに起因するアクシデントや合併症への対策、各医療機関での正確な情報共有が難しいなどの課題もあるとした。
 最後に、医療的ケア児との生活は、家族にとって「日常」であり「子育て」と説明。医療現場が連携し、意欲的に取り組むことが重要と結んだ。