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時の話題

新型コロナウイルス感染症の類型見直し

府医ニュース

2023年2月15日 第3027号

段階的な見直しが必要

 現在、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(ADB、座長=脇田隆字・国立感染症研究所長)は、新型コロナウイルス(以下コロナ)の感染症法上の類型に向けた議論をしている。今は2類相当として取り扱われているが、5月8日から5類への移行が予定されている。
 5類には季節性インフルエンザ(以下インフル)が分類されているが、ADBでもコロナはインフル同等とは評価していない。まずBA・5の感染力はインフルよりかなり強い。第8波では、BA・5が多くを占めるが、BQ・1とXBB・1・5が欧米から入ってきており、感染力はBA・5よりさらに強いとされ、今後置き換わっていく可能性がある。
 その感染力のために、医療現場ではクラスターの発生や、入院ベッドの逼迫、搬送困難事例が急増し、入院できない重症者が増えている。一般の救急患者の医療にも影響が出ている。インフルは季節性であるが、コロナは季節を問わず流行する。また、インフルに比べて後遺症が多いことが特徴である。そして、何よりコロナはインフルに比べて死亡者数が多い。オミクロン株になり重症化率の低下でコロナの呼吸不全による死亡は減少したが、患者の基礎疾患の悪化や、循環器系への障害による死亡が多くなっている。
 インフルは一定の効果が認められた抗インフル薬が容易に利用できるが、コロナはゾコーバが昨年末に承認されたものの、処方できる医療機関も限られ、効果も今のところ未知数である。ウイルスの変異もある中で多くの国民が複数回感染を経験することで、いずれはインフル並みになることが考えられるが、まだまだ時間がかかる。
 5類相当になると、①ワクチンや治療費が自己負担になる②就業制限がなくなる③隔離のための入院措置がなくなる④定点把握になる⑤すべての医療機関で診療する――など。④はすでに全数把握ではなくなり、ワクチンや治療費は公費で継続することが、多くの識者からも提案されている。③も今は重症化が予想される高齢者等のみ入院治療を行っているが、多くは自宅や宿泊施設での隔離となっている。宿泊療養はなくなると思われる。コロナの抗原検査やPCR検査が公費で行われているが、公費での検査は継続すべきである。⑤はゾーニングが不可能な診療所においては、すべての診療所で可能ということではない。病床確保に対する補助金も継続すべきで、打ち切られるとコロナ患者を診れない病院も出てくる。
 ネガティブ・ケイパビリティという考え方があり、早急に問題解決できない中で耐えることが大切で、段階的に緩和していくしかないと思われる。