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医師・医療関係者のみなさまへ

令和4年度 障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会

府医ニュース

2023年2月1日 第3026号

障害の「多様な特性」理解を

 令和4年度「障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会」が4年11月10日午後、大阪府医師会館で行われた。本説明会は、大阪府からの委託を受け実施。オンラインとの併用で約110人が受講し、障害福祉制度や医師意見書記載時の留意点など理解を深めた。

 中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会理事)が座長を務め、冒頭、中尾正俊副会長があいさつ。引き続き、小牟禮まゆみ氏(大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課長)が「障がい福祉制度と医師意見書について」と題して講演を行った。
 小牟禮氏はまず、障害福祉制度と最近の動向を説示。障害者数全体は増加傾向で、中でも在宅・通所の方が増えており、地域で安心して過ごせる体制の構築が望まれると語った。また、障害福祉サービス等の予算は、10年前と比べ約2.2倍と述べ、医療、介護、障害の総費用額も伸びていると加えた。
 次に、障害支援区分を概説。障害者総合支援法を引用し、「障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合を総合的に示すもの」とした。さらに、「障害の程度」と「必要とされる支援の量」は必ずしも一致しないと言及。必要とされる標準的な支援を導くことが重要だと述べた。その上で、障害支援区分は市町村がサービスの支給決定時に勘案事項の一つとして考慮するほか、①報酬単価の多寡②市町村に対する国庫負担基準額③対象者が利用できるサービスの要件――に用いられると加えた。
 医師意見書に触れ、その役割を詳述した。市町村による認定原案の作成(コンピューターによる一次判定)、市町村審査会(二次判定)で活用されており、「審査判定の根拠となる重要な情報」だと強調。▽医師意見書に記載漏れなど、評価に不足や誤りがあると正しい判定結果が出ない▽医師意見書の特記事項等に的確な情報の記載がない場合は、市町村審査会での二次判定で十分な審査を行うことができない――などとして、分かりやすく具体的な記載を求めた。
 続いて、障害者差別解消法における合理的配慮に言及。具体例を挙げながら、「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮」を示した。また、大阪府では平成28年4月より「大阪府障がい者差別解消条例」を施行し、差別解消に取り組んでいると強調。医療機関でも「障害者差別解消に向けた対応に協力してほしい」との要請がなされた。

医師意見書、書き方のポイント

 李利彦氏(府医介護・高齢者委員会委員/大阪精神科診療所協会副会長)が、「医師意見書書き方のポイント2022」と題して、記載の留意点を解説した。
 はじめに地域包括ケアシステムを説明するとともに、その考え方を「障害・福祉にも転用することになった」と指摘。サービス利用の判断基準が「医師意見書」であり、利用者の実情に沿うためにも意見書の記載が重要だと述べた。また、実際に記入する際には「本人が困っていること」に着目するようアドバイス。日常生活の把握には、労災保険で使用される『日常生活状況報告書』などを利用して聞き取ると状況がつかみやすいと加えた。
 続いて、意見書の「行動及び精神等の状態に関する意見」欄を詳説。自身の経験を交えながら、▽行動上の障害▽精神症状・能力障害二軸評価▽生活障害評価▽精神・神経症状▽てんかん――に関して具体的な判断基準などを示した。
 最後に「特記すべき事項」の記載例を紹介。本人の生活のしづらさをポイントに記載すると分かりやすいと結んだ。

医師意見書は大きな役割
中尾副会長あいさつ

 平成18年4月に施行された「障害者自立支援法」により、身体・知的・精神の三障害に対する一元的な制度が確立した。その後、25年4月に「障害者総合支援法」が施行され、「制度の谷間」に置かれていた難病の方々が障害福祉サービスの対象とななった。対象となる疾病は、令和3年11月時点で366疾病にまで拡大されている。
 また、「障害者差別解消法」(平成28年4月)では、障害を理由とする差別のない社会を目指し、不当な差別的取り扱いの禁止や合理的配慮の提供などが、医療機関を含めた社会全体に求められている。大阪府では、令和3年4月に「大阪府障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例」を改正し、これまで努力義務とされていた「事業者による合理的配慮の提供」が義務化された。
 本日は、大阪府から「障がい福祉制度と医師意見書」を説明いただき、その後、「医師意見書の書き方のポイント」を解説する。医師意見書は、障害者総合支援法の施行により、「障害程度区分」が「障害支援区分」に改正され、介護給付等の決定に、知的障害や精神障害など、多様な障害の特性、その他の心身の状態や支援の度合いが総合的に反映されるようになった。区分認定の流れの中で、一次判定および二次判定における検討対象となるものであり、非常に大きな役割を果たす。
 本説明会が障害者施策の理解と医師意見書作成の一助となることに期待したい。