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時事

第12回全世代型社会保障構築会議開催

府医ニュース

2023年1月25日 第3025号

人口減少・超高齢社会の課題を克服

 令和4年12月16日に第12回全世代型社会保障構築会議が開催され、報告書が取りまとめられた。本報告書は12回にわたって開催してきた議論を総括して報告するものである。
 全世代型社会保障の基本的考え方において、まず全世代型社会保障の構築を通じて目指すべき社会の将来方向として3点を挙げている。第一は少子化・人口減少の流れを変えることであり、未来への投資として、子育て・若者世代への支援を急速かつ強力に整備することである。第二はこれからも続く超高齢社会に備えて、社会の持続可能性を高める対応を強化していくことである。具体的には雇用や働き方に対して歪みをもたらすことのない中立的な社会保障制度の構築を進め、制度の包摂性を高めることで、誰もが安心して希望どおり働き、活躍できる社会を実現して、労働力を確保する必要がある。さらに、社会保障給付を皆で支え合う仕組みを整備するとともに、国民一人ひとりがそれぞれの多様なニーズに対応するサービスを利用できる環境を創出する必要がある。第三においては高齢期はもとより、すべての世代において独居者が増加し、孤独・孤立の問題も深刻化する恐れがあり、地域の支え合いを強める包括的なケアを提供する体制の整備や住民同士が助け合う互助の機能の強化も必要となってくるとした。
 日本の社会保障は国民生活の安定や経済社会の発展に大きく貢献してきたが、各制度は複雑化・専門特化し、制度ごとの縦割りや制度間の不整合といった問題も指摘されている。こうした中で、社会保障の全体像をいま一度俯瞰し、その再構築を図ることが全世代型社会保障に求められていることである。その基本理念は目指すべき社会の将来方向を踏まえ、次の5点に集約することができる。まず、①将来世代の安心を保障する:全世代は若年期、壮年期および高齢期はもとより、これから生まれる将来世代も含むものとして考える必要があり、負担を将来世代へ先送りせず、同時に社会保障給付の不断の見直しを図る必要がある。②能力に応じて、全世代が支え合う:全世代型社会保障の要諦は全世代で社会保障を支え、また社会保障は全世代を支えるということにある。③個人の幸福とともに、社会全体を幸福にする:社会保障は単なる社会的な支出にとどまらず、社会的に大きな効果をもたらすものであり、財源調達とあわせて、その機能が発揮されるようにすることが重要である。また社会の分断を防ぎ、統合を強めていくことは、若年世代における格差拡大が懸念される今日において、特に強調されるべきことである。④制度を支える人材やサービス提供体制を重視する:医療・介護などのサービス提供体制については、今後の医療・介護ニーズや人口動態の変化、コロナ禍で顕在化した課題も踏まえ、質の高い医療・介護を効率的・効果的に提供できる体制を構築するため、機能分化と連携をより一層進め、国民目線での改革に取り組むことが重要となる。⑤社会保障のデジタルトランスフォーメーションに積極的に取り組む:困っている人に対し、公平、迅速かつ効率的に支援を届けるという社会支援のベースとなる社会インフラの整備において制度的な革新をもたらすものである。
 全世代型社会保障を構築していくにあたっては、それぞれの地域ごとに高齢者人口がピークを迎えて減少に転ずる時期が大きく異なることを前提として、2040年頃までを視野に入れつつ、しっかりとした時間軸を持って取り組みを進めていくことが重要である。さらに、社会保障ニーズや活用可能資源の地域的差異を考慮した地域軸も踏まえた取り組みも必要である。
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