TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時の話題

かかりつけ医機能の制度整備②

府医ニュース

2023年1月25日 第3025号

イギリス、ドイツ、フランスの制度を参考に

 イギリスのGP(General Practitioner)、フランスの「主治医」、ドイツの「家庭医」は、一次医療を担うことが法律に明文化されており、専門医療や入院医療等の二次医療が必要な時は、その紹介により専門病院を受診することとなる。日本は、一次医療の担い手について明文化されておらず、フリーアクセスの下、紹介状なく大病院に外来受診する弊害がある。
 日本はいわゆるドクターショッピングが問題であり、「かかりつけ医」の制度化は医療費を抑制すると考えられている。最もゲートキーパー機能が強いのはイギリスのGP制度であるが、極端にフリーアクセスが制限され、日本では到底受け入れられない。保険制度から「かかりつけ医」を考えた時、税を財源とする英国ではなく、日本と同様に公的社会保険を財源とするドイツやフランスが参考になる。
 イギリスは1948年NHS(National Health Service/英国国民医療制度)の下で、GP制度が発足。医療費は原則無料で、他の医師の診察を受けた場合は全額自己負担となる。GPは2年の初期研修と3年の専門医研修が必要で、専門医試験に合格すると家庭医療専門医となる。日本では総合診療医に当たる。王立の家庭医療専門医学会ができ、家庭医専門医研修やGPの質の向上に寄与している。以前はソロで開業していたが、最近ではグループで開業することが多い。
 ドイツでは2004年1月に家庭医制度が導入された。18歳以上の被保険者が希望により家庭医に登録するが、90%がかかりつけ医を持っている。登録した家庭医での自己負担は無料、それ以外(眼科と産婦人科は除く)だと10ユーロの負担金が生じる。家庭医は州家庭医団体への登録と研修が条件である。家庭医の報酬は、人頭割の報酬と個別受診した時の個別報酬の二階建てである。個別報酬は一般診療の包括が中心で、一部の出来高報酬で構成される。家庭医の変更は希望により可能であり、フリーアクセスは担保されている。
 フランスは2005年7月に「主治医制度」を導入。主治医制度は研修の必要はなく、専門医でも登録されるが多くは一般医が選ばれる。16歳以上の被保険者は一人の主治医を登録。主治医を受診すれば3割負担だが、それ以外(眼科、産婦人科、精神科、歯科を除く)の一般医を受診すれば7割負担となる。主治医の報酬は人頭割の包括報酬と個別の出来高報酬になる。個別報酬は保険診療中心のセクター1とそれ以上の報酬のセクター2がある。フランスでは自己負担を補足する制度(CMU:Couverture Maladie Universelle)があり、割り増し分は補填され、ほとんど自己負担無しとなる。
 欧州の制度を参考とすれば、日本でもドイツやフランスのように登録は義務化されないが、その機能や役割分担の法整備が注目される。
参考文献:JRIレビュー2020/調査部主任研究員・飛田英子