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医師・医療関係者のみなさまへ

在宅医療における死因診断に関する研修会

府医ニュース

2023年1月25日 第3025号

正確な死因統計を医療政策に

 令和4年度大阪府在宅医療総合支援事業の一環として、「在宅医療における死因診断に関する研修会」が1月13日午後、大阪府医師会館で開かれた。本研修会はウェブでも配信され、約170人が聴講した。

 大阪府在宅医療総合支援事業は、在宅医療の推進の観点から府医が大阪府より受託している。①在宅療養・看取り②多職種連携③相談窓口人材の広域連携支援――などの事業を実行している。
 当日は、中祐次氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)が座長を務め、はじめに前川たかし理事があいさつ。超高齢社会において自身が望む最期を迎えるためには、在宅医療の推進が必要だと前置き。今後はQOLに配慮した「支える医療も大切になる」と見通した。さらに、在宅看取りの必要性が一層高まると言及。各地域で推進することが大切との見解を示し、本研修会がその一助になればと期待を寄せた。

「死後診察」の所見取りなど解説

 松本博志氏(大阪大学大学院医学系研究科法医学教室教授)が、「在宅医療における死因診断について――死後診察とは」と題して講演した。
 まず、2年4月1日に施行された「死因究明等推進基本法」に触れ、均一な死因究明と科学調査が行われることになったと報告。未曽有の多死社会を迎える我が国において死の判定・死因診断が重要になるとの見方を示した。一方で、死後は死斑、硬直などの死体現象が現れることで、「診察が難しくなる」と指摘。犯罪を見逃さない視点も必要になると説いた。そして、適切な死因の判定により正確な死因統計が成立し、それが公衆衛生や医療政策につながると強調。死因究明への意識を変える必要があると促した。

診断のポイント

 松本氏は、厚生労働省の『情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン』(平成29年9月)により具体的な死後診察の内容が定義されたと説明。死亡確認を5分以上あけて2回行うほか、▽体幹・頭頂部の損傷▽左右の眼球・上下眼瞼結膜▽鼻腔・左右外耳道・口腔――などを観察する際のポイントを伝えた。
 引き続き、死体現象を提示。死斑の色調や転位、死後硬直、角膜混濁、体温低下などで死後経過時間の推定が可能であり、遺族の説明と齟齬がないかの確認を求めた。あわせて、所見を診療録に記載することが重要だとアドバイス。推定可能な死因と生前の既往歴等の情報を考慮して死因診断を行ってほしいと述べた。
 最後に、死因究明学とは「すべての人の死因究明から、その解析・探求を経て次の命を守る学問」と主張。患家で行う最後の医行為が、すべての人の役に立てばと結んだ。