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医師・医療関係者のみなさまへ

時事

顔認証システムは必須ではない

府医ニュース

2022年7月27日 第3007号

オンライン資格確認の「原則義務化」問題

 半ば強制的に進められていると感じる保険証情報の「オンライン資格確認システム」。保険診療ができなくなる恐れがあると判断したので、私の診療所でも導入の検討を始めた。受付スペースの問題で、カードリーダーは顔認証付きのものではなく汎用カードリーダー導入を考えている(ただし、顔認証付きカードリーダーを導入せずに、汎用カードリーダーを購入し、オンライン資格確認のためのシステム改修をした場合は補助金の交付対象外)。
 汎用カードリーダーでも、顔認証は職員の目視によって行えるとされる。また、汎用カードリーダーは顔認証付きのものより安価で、数カ月待たずとも手に入る。汎用カードリーダーを顔認証のスペアとして準備することも可能である。
 私が顔認証システムを導入したくない理由は、①設置場所の問題のほかに、②発熱外来など屋外で対応する場合、屋内にある顔認証システムではマイナンバーカードでの確認が困難になる(保険証での確認は可能)③顔認証付きカードリーダーありきの補助金制度と、顔認証付きを導入数年間の無償修理対応の後は月々の保守費用を特定の企業に支払う④厚生労働省がオンライン資格確認の原則義務化を「療養担当規則」改正で行う意向がある――などである。①と②は当院の都合であり、③と④に関しては、社会的共通資本への市場主義と社会主義による介入である。
 しかし、医療機関に顔認証付きカードリーダーおよび確認システム導入ができていれば、その医療機関でマイナンバーカードの保険証登録が可能である。役所に行く必要がないのだ。これは汎用カードリーダーではできない。また、顔認証付きカードリーダーを使用する場合、オンライン資格確認接続用PCは毎朝起動しておけば、診察中は操作する必要がないので既存の受付PCとモニターを共有(切り替え)してスペースが節約できる。一方、汎用カードリーダーを使用する場合、オンライン資格確認接続用PCをその都度操作するため、別途専用のモニターとキーボード・マウスを設置、操作するスペースが必要となる。施設によっては顔認証の方が場所をとらない場合もある。
 最後に、厚労省が打ち出したオンライン資格確認「原則義務化」の療養担当規則改正。政府はマイナンバーカードの利用促進を目的としていることは明らかだが、オンライン資格確認は既存保険証でも可能である。だから、私は汎用カードリーダーでのシステム構築でささやかな抵抗を続ける。スピード感、システム化など、聞き心地のよい言葉は、全体主義への隷従につながる。そして、療養担当規則まで持ち出されては、従わない保険医療機関の指定の取り消しも心配だ。日本医師会はこの強制性に関して中医協で抗議していただきたい。私も導入の準備は嫌々始めるが、この30年間、我が国を破壊し続けた改革信仰への警戒を忘れず、現場や地域住民への負担をこれ以上増やさぬよう広報を続ける。(葵)