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時の話題

オンライン資格確認の導入

府医ニュース

2022年7月27日 第3007号

懸念される多くの課題

 6月7日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)を閣議決定した。その中にはマイナンバーカードの保険証利用に向けて支援を見直し、保険証の原則廃止を目指すと明記されている。
 昨年10月からマイナンバーカードを保険証として利用できるようになったが、5月15日時点でオンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申し込みは、約60%(約13万施設)、システム改修し、準備が完了している施設は約25%、運用を開始している施設は、病院が35.5%、医科診療所が13%、歯科・薬局を含めた全体で19%であった。
 運用開始割合は都道府県による地域差が著しく、地方は比較的進んでいるが、東京、大阪などの都市圏では低い。また、本格運用開始から4月末までの期間で、オンライン資格確認等システムを活用した資格確認は約1.7億件行われている(マイナンバーカードによるもの約85万件、保険証によるもの約1億3600万件、一括照会によるもの約3千万件)。政府は、今年度中に概ねすべての医療機関・薬局での導入を目指すとしており、目標達成には遅くとも今年の9月ごろまでにカードリーダー未申し込みの施設による申し込みが必要としている(顔認証付きカードリーダーは受注生産となっており、申し込みから配送まで4カ月程度必要)。そのため、本年度上半期に導入加速化が図られるよう、個別施設への架電やダイレクトメール等による周知を行うとともに、地域単位の説明会やシステム事業者を通じた働きかけなど集中的な取り組みが予定されている。導入補助金は、令和5年3月31日までに導入が完了し、同年6月30日までに申請することが要件となる。
 現在、導入推進に向けた支援・働きかけが行われているが、様々な課題も提起されている。▽イニシャルコストが補助金上限額を超える場合があり、ランニングコストが発生する▽マイナンバーカードの普及率が低く、利用者が少ない▽セキュリティ対策▽マイナンバーカード紛失時等の責任の所在▽問い合わせ対応など、医療機関・薬局側の負担▽資格確認端末やそのほか必要な機材が入手できない▽依頼してもなかなか事業者が対応してくれない▽ネットワークの環境設定等に時間が掛かる――などである。
 政府はオンライン資格確認をデータヘルスの基盤と位置付けており、さらなる対策として来年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入を原則義務化する。また、システム導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むように財政措置を見直し(診療報酬上の加算の取り扱いについては、中医協で検討)、6年度中をめどに保険者による保険証発行の選択制の導入を目指すとしている。現状、拙速なオンライン資格確認の導入は、医療機関・患者双方に負担を強いる懸念があり、丁寧な説明や環境整備が必要と考える。