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医師・医療関係者のみなさまへ

茂松府医会長、日医副会長に就任

府医ニュース

2022年7月20日 第3006号

第151回 日医定例代議員会
第152回 日医臨時代議員会

 第151回日本医師会定例代議員会(定数376人)が6月25日午前、日医会館で開かれた。任期満了に伴う役員改選が行われ、新執行部が誕生した。かかりつけ医の制度化や医療デジタルトランスフォーメーション(DX)など、医療界を取り巻く環境は厳しい。日医の下にすべての会員が一致団結して立ち向かわなければならない。松本吉郎・新会長の手腕が期待される。

――組織強化と信頼回復へ――

 議長・副議長の任期が満了しているため、事務局が秋田光彦代議員(大阪府)を仮議長に推薦。同氏の進行の下に定足数確認後、議事録署名人2人(本間博代議員〈岩手県〉・中澤宏之代議員〈高知県〉)が指名された。議長・副議長の立候補はともに定数内であったため、柵木充明代議員(愛知県)が議長、太田照男代議員(栃木県)が副議長に選定された。続いて柵木議長が議事運営委員会委員8人を紹介(近畿からは高井康之代議員〈大阪府〉が就任)した。
 次いで中川俊男会長が、令和3年度における日医の事業を報告。定款規定に基づき、5月17日の理事会で承認を受けたと述べた。

3年度決算を承認

 中川会長が3年度財務諸表に基づき、日医決算を報告。正味財産合計は5憶2764万5772円のプラスとした。続いて柵木議長より財務委員会委員が指名され、同委員会を開催。5月6日に開催された前期同委員会での審議状況・結果が藤原秀俊委員長(北海道)より伝えられ、挙手多数で承認された。

中川会長勇退 自らの思い新執行部に

 中川会長より、役員および裁定委員を選任後、引き続き代表理事(会長・副会長)・業務執行理事(常任理事)を選定するとし、議案を一括審議にしたいと説明があった。その後、議長の許可を得てあいさつ。日本の医療の行く末については、「新執行部に託す」と言及。16年に及ぶ医師会活動には感謝しかないと述べ、代議員へ「新執行部を支えてほしい」と訴えた。

新役員の選任・選定
会長、副会長は選挙

 会長候補者は定数1に対し、松原謙二氏(大阪府)および松本吉郎氏(埼玉県)が立候補。投票の結果、松本氏が選任された(松原氏64票、松本氏310票、白票1、無効1、総数376票)。副会長候補者は定数3に対し、今村聡氏(東京都)、猪口雄二氏(東京都)、角田徹氏(東京都)、茂松茂人氏(大阪府)の4人が立候補。投票の結果、茂松氏・猪口氏・角田氏が選任された(今村氏227票、角田氏250票、猪口氏262票、茂松氏265票、白票121、無効0、総数1125票)。常任理事候補者は立候補者の1人が辞退し、定数となったため、立候補者10人全員が選任された。理事、監事、裁定委員は、いずれも定数内の立候補であったため、挙手多数で選任された。次いで、選任された会長・副会長・常任理事候補者が挙手多数で承認を受け、選定された。新役員の任期は同日より2年後の定例代議員会終結の時まで。
 閉会にあたって日医役員・裁定委員が登壇。松本新会長が謝辞を述べるとともに、山積する難題に新執行部が一丸となって取り組むと力を込めた。
 翌26日には第152回日医臨時代議員会を開催。松本会長が所信を表明した。また、5年度日医会費賦課徴収が承認されたほか、全国各ブロックより17題に及ぶ代表質問がなされた。
 6月26日に開催された第152回日本医師会臨時代議員会では、柵木充明議長が定足数を確認した後、前日の第151回日医定例代議員会で新会長に就任した松本吉郎・日医会長があいさつした。その後、門田守人・日本医学会長が登壇。同会の120周年事業を紹介する中で、過去の反省を忘れず、未来への提言を行うことが日本医学会の存在意義だと力説した。そして、「今後も学術面から日医を支え、車の両輪となり協力する」と語った。

松本吉郎・日医会長あいさつ(所信表明)
第152回日医臨時代議員会

 第151回日本医師会定例代議員会で会長に選任・選定をいただきました。多くのご支援に感謝申し上げます。代議員の先生方、そして会長選への出馬を後押ししていただいた全国の多くの会員の先生方にお礼を申し上げます。医師会運営にあたっては、①地域から中央へ②国民の信頼を得られる医師会へ③医師の期待に応える医師会へ④一致団結する強い医師会へ――を柱として進めてまいります。
 日医の役割は「国民の健康と生命を守ること」であり、誰からも信頼される医師会となるよう地域医師会とコミュニケーションを密にしながら運営してまいります。また、組織力の強化に向け、常任理事の増員を検討いたします。地域の実情を知る有能な医師に参画していただきたいと思います。あわせて、卒後5年間の会費を無料化いたします。若手医師の参画が重要であり、6年目以降の会費減免や医師会活動の重要性を伝える取り組みなども検討を進めてまいります。
 新型コロナウイルス感染症への対応は、世界的に見ても他国に引けを取らない高水準の対応ができました。今後も地域医師会への情報発信や行政、各団体等との連携に努めてまいります。国民皆保険制度および医療提供体制の堅持と持続性の確保に向け、政府与党と普段からのコミュニケーションで意思疎通を図ってまいります。まずは直面している参議院議員選挙を勝ち抜くことが喫緊の課題と考えています。
 これまで医師会活動の中で取り組んだ課題をさらに深めるとともに、様々な医療界の課題に鋭意取り組んでまいります。役職員一丸となって日医の強化を図ってまいりますので、ご支援をお願いいたします。

日医会費賦課徴収 挙手多数で承認

 「令和5年度日医会費賦課徴収の件」が上程され、松本会長が、『日医会費賦課徴収規定』に基づき、前年と同じ会費額および徴収方法を提案。挙手多数で可決承認された。
 引き続き、全国の各ブロックから17題の質問が投げかけられ、新執行部が応じた。近畿ブロックからは、▽木下智弘代議員(和歌山県)が、「人生100年時代に向けた予防・健康づくりの推進を成就するために、これからの健康教育、特に学校医等の在り方・役割について」▽高井康之代議員(大阪府/大阪府医師会副会長)が、「厳しさを増す政府の医療政策への日医としての対応方針決定の今後の在り方について」▽越智眞一代議員(滋賀県)が「特定化学物質障害予防規則等の廃止について」と題して質問した。

代表質問
政府の医療政策への日医としての対応方針決定の今後の在り方について 高井 康之 代議員(大阪府)

 高井代議員は、はじめに医療政策に対応する際に、日医内部で十分な検討がなされているのかをただした。また、令和4年度診療報酬改定を引き合いに、「中医協が形骸化されているのではないか」と吐露。今後の中医協の在り方や日医としての関わり方を確認した。さらに、かかりつけ医制度化に関してどのように対応していくのか説明を求めた。

長島常任理事 答弁

 高井代議員の質問に対しては、長島公之・日医常任理事が答弁。官邸主導で医療政策が進められるようになり、中医協等の形骸化という認識は共有しているとの見解を示した。その上で、今後は「日医が現場の声を丁寧に聞いて反論しなければならない」と加えた。また、「かかりつけ医の制度化」については、「必要な時に適切な医療にアクセスできる現行の仕組みを守るよう主張していく」と強調。一層の支援と協力を求めた。

人生100年時代に向けた予防・健康づくりを推進するための健康教育、特に学校医等の在り方・役割について 木下 智弘 代議員(和歌山県)

 木下代議員は、▽こども家庭庁創設後の方針▽学校医の手引きなどの発刊の予定▽学校医の地位向上と妥当な対価および会員が学校医就任を敬遠することのないような方策――について、日医の見解を確認した。
 答弁に立った渡辺弘司・日医常任理事は、学校医の重要性を地元の首長・教育委員会に働きかけてほしいと要請。学校医の地位向上に向けた地域の課題を日医がくみ取り、中央教育審議会等に提言したいと応じた。

特定化学物質障害予防規則等の廃止について 越智 眞一 代議員(滋賀県)

 越智代議員は、日本は世界と比べて職業がんの把握が遅れているが、厚生労働省は、「特定化学物質障害予防規則」等を廃止しようとしていると問題視。行政の責任回避との憤りを日医執行部にぶつけた。
 神村裕子・日医常任理事が答弁。規則の廃止による職業がん増加の懸念は共通認識とした。一方、「企業による自律的管理」の定着具合によって延期もあり得ると指摘。安易に廃止されないよう注視すると答えた。

傍聴記
茂松・日医副会長の手腕に期待

 6月とは思えぬ暑さの中、第151回日本医師会定例代議員会の開会が宣言された。冒頭、中川俊男会長が堅い表情で、簡潔なあいさつ。令和3年度事業報告。3年度決算承認。それぞれ型通りに済ませた。代議員席では、私語もなく緊張感が漂う中、日医役員選挙に臨み、柵木充明議長が、退任する中川会長に発言を促す。中川会長は演台ではなく、ステージの最前までマイクを手に進む。新型コロナウイルスに翻弄された2年間を振り返り、発熱外来、入院受け入れ、ワクチン接種に献身的に努めた会員への労い。16年間の役員在任中の仲間や支援者への感謝。最後に、「考えていたよりも早い区切り」と詫びた上、次期キャビネットに後を託すと。胸中を察し、会場からは大きな拍手。堅い表情のまま。
 会長選挙開始。会場閉鎖の宣言で緊張感。皆が息を潜める中、開票。松本吉郎候補が376票中、310票を獲得し、当選。会場に安堵の拍手。ただ、異例となった副会長選への緊張感は続く。開票はスキャナーを用いて迅速にと。投票箱から票を出す際、何枚かが集票台から落ちる。慌てて係員が集める。念のためと台を動かすと、一枚現れる。会場から失笑が起こる。雰囲気が和らぎ、私語も。20分程度で結果報告。茂松茂人・大阪府医師会長が265票でトップ。猪口雄二候補262票、角田徹候補250票で各々当選。白票が121と目立つのは、今村聡候補1名のみを投票された代議員がおられたのかと思えた。その後の常任理事、理事は無投票となり、キャビネット通りの結果に、会場は一挙にリラックスした風。松本新会長は、厳しい状況の中、医師会運営への絶大な協力を呼び掛けた。壇上のキャビネットの中、女性役員は3名。クォーター制を目指しての女性参画は、今後の課題であろう。
 翌日、第152回日医臨時代議員会。昨日と違い和やかな空気。空席もちらほら。机にタブレットを置く代議員も。新会長、所信表明。「地域から中央へ」「国民の信頼を得られる医師会へ」「医師の期待に応える医師会へ」「一致団結する強い医師会へ」を4本柱と。今回の会長交代の経緯を踏まえたものと感じられた。続けて、現在山積する課題について所信を示された。端々に、郡市区医師会、都道府県医師会、日医の連携の再構築・強化に努めるとの思いを込められていた。府医会長から新たにキャビネット入りした、茂松副会長への期待は大きいであろう。
 各ブロック代表質問17件、当日採択の質問2件に長時間費やされた。このうち、高井康之・府医副会長は「厳しさを増す政府の医療政策への日医としての対応方針決定の今後の在り方」と、核心的な質問。リフィル処方、オンライン診療、かかりつけ医の制度化と、診療の在り方を揺しかねない課題への対応に、具体的施策を表明されなかったが、日医としての考え方・プロセスの見える化を徹底し、地域医師会との疎通を図ると答える。その中「リフィル処方発足の経緯は分からない」との発言は、事態の深刻さであろう。
 他の質疑では、具体的議論を交わすというよりも、日医の立て直しへのエール交換の趣があったが、「医師会への強制加入制度の是非も考えたい」との発言には興味を感じた。弁護士会に例がある。ただちに賛同を感じるとはいえないが、医師会の在り方の論議のカウンターパートとして価値あるかもしれない。
 新しい日医運営、ことに茂松副会長の手腕への大きな期待を胸に日医会館を後にした。
(翔)