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時事

第8次医療計画検討会

府医ニュース

2022年7月6日 第3005号

2040年に向けた医療動向把握

 6月15日、第8次医療計画検討会(第9回)が開催された。加納繁照・日本医療法人協会長も出席されており、大所高所からの計画策定に期待が膨らむ。今回話し合われたのは外来医療の提供体制である。少子化傾向と団塊の世代が80代を迎えていくに当たり、この人口動向が外来医療に与える影響を鑑みながら、医療提供体制の計画が進んでいる。
 南北に長い大阪府では、京阪神地区を中心とした外来医師多数区域と南部の医師少数区域を抱えるため、一律の医療政策は取りにくい。また人口密度の関係から、外来患者が最大となる時期が2025年から30年と、そのピークに差がある。外来患者の多くは高齢化に伴い外来受診に困難が生じるため、訪問診療に移行していくが、患者数が最大となる年は、35年から40年以降と10年遅れたピークが来る。さらに高齢化に伴う多疾患罹患による救急搬送件数に関しては、最大となる年が30年から40年以降と予測されている。
 このデータを基に、今後新規開業する際の医療機能はどうあるべきかが、今回の会議のテーマであった。このような患者動向の中で、救急搬送時の診断に有用なCTとMRI等の施設分布が検討された。大阪府はこれらの1台あたりの検査数は全国平均よりも多い。しかし統計学的に台数が多くなればなるほど、機器1台あたりの検査数は少なくなる傾向にある。一方、多いなりの問題点はあり、効率的な活用に向けた取り組みが必要となる。実際中小病院での稼働率は大病院と比較して低く、設備のない診療所や飽和状態にある大病院との地ならしが地域医療向上には必要である。このような場を都道府県に設ける策定が計画されている。
 全体の議事録と資料を一読すると、委員会での議論は、第8次医療計画の厚生労働省から提供された資料を基に議論が進められており、定まった方向性の中での議論である。従ってそこで決定していくよりも、地固め的内容といった方が良い。一番重要なことは急性期病院の改革と、その患者の逆紹介先である「かかりつけ医」がどうあるべきかの論議であり、そこに現在コロナ病床で方向性を模索中の慢性期病床が、かかりつけ医制度の議論の中で、在宅診療との整合性をどのようにとっていくかで決定されると思われる。国家安全保障の観点に立てば、機械的病床削減が国民の健康に危機的な状態を招くことは、今回のコロナ禍で明確になった。実際在宅診療でこれを代用できるかというと、管理不足でコロナ死したという新聞記事が散見され、世間は完全な病床削減を不安視していることも事実である。この反面、補助金を受けたにもかかわらず空床があるという批判的記事もある。不確実な感染予測に寄らざるを得ない行政決定にも責任の一端はあるが、医療界の努力不足で空床が生じているかのごとく責任転嫁するような内容には反論するべきである。このように病床削減には世論の賛否両論があり、まさにこれからの啓発と議論が正念場であろう。しかし議論の間にも医療は進化していく。コロナ禍前に考えていた構想が、コロナ禍後ではIT機器の進歩などがあり、再考の余地がある。例えばアップルウォッチなどを使ったインターネットを介した遠隔医療の報告が、臨床学会では増加している。そのうち病室機能を丸ごと各家庭に簡易設置できるシステムが開発されていくだろう。本紙第2758号(平成27年8月26日付)本欄において「平面病院」という言葉を使ったが、コロナ禍を経ていまだに言葉が生きており、現実味を帯びてきた。慢性期病床と在宅医療の境が無くなっていくため、現在の考え方が古くなる未来もやってくるのである。
(晴)