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医師・医療関係者のみなさまへ

在宅医療におけるACP研修会

府医ニュース

2022年6月29日 第3004号

本人にとっての最善を考えて

 令和3年度大阪府在宅医療総合支援事業の一環として、「在宅医療におけるACP研修会」が3月21日午後、大阪府医師会館で行われた。今回は会場とオンラインの併用で実施され、会員をはじめ在宅医療に関わる医療従事者ら約150人が聴講した。
 本研修会で座長を務めた中尾正俊副会長は、冒頭のあいさつで「ACP(Advance Care Planning/人生会議)がコロナ禍で一層重視されている」と言及。今回の講演が地域での取り組みを考える機会につながればと期待を寄せた。
 続いて、新田國夫氏(日本在宅ケアアライアンス理事長)が、「アドバンス・ケア・プランニングに関わる諸問題について」と題して講演した。はじめに、我が国の現状に触れ、「死亡者数の半数は85歳以上が占める」と指摘。平均的な高齢者像では語れない「多様性と格差の時代」と評した。
 また、ACPを解説するにあたり、新田氏の監修で東京都が作成した『わたしの思い手帳ACP』を引用。本人の考えや気持ちが変わる「ゆらぎ」を理解して進めることが大切だと述べた。あわせて、①医学的適応②患者の意向③QOL④周囲の状況――の4分割法による症例検討シートを提示。職種によって異なる「倫理の見え方」を加味し、患者本人の意思決定を支援することが重要と語った。そのほか、新型コロナウイルスに感染した高齢者の人工呼吸器導入に焦点を当てACPを検証。高齢者の人工呼吸器イコール延命措置ではないとの持論を展開し、「本人にとって何が最善かを考えた上でACPを進める必要がある」と結んだ。
 講演後、中尾副会長が「かかりつけ医としての役割」について助言を求めた。新田氏は、「高齢者の複雑な事情を把握しているのはかかりつけ医」と強調。一方で、パターナリズムに陥りやすいと注意を促し、状況を俯瞰して見ることも大事だと応じた。