TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

時事

令和4年度診療報酬改定(2)

府医ニュース

2022年6月15日 第3003号

在宅医療の提供は進むか

 令和4年度の診療報酬改定では、需要の増加が見込まれている在宅医療については小幅な変更となり、従来から取り組んでいた医療機関への影響は少ないと考える。在宅療養支援診療所(在支診)・在宅療養支援病院(在支病)の施設基準の見直しでは機能強化型在支診に地域ケア会議等への出席状況等を地方厚生(支)局長に報告することや他の医療機関および介護保険施設等と連携し、地域ケア会議、サービス担当者会議等に出席するよう促した。さらに、在宅療養移行加算を算定する診療所の往診体制および連絡体制の構築に協力することも求めたが、機能強化型在支診の側にメリットがみられず、進む可能性には疑問が残る。一方、機能強化型在支病の施設基準では、緊急往診の実績に代えて、在宅療養支援診療所等からの要請により受け入れを行う病床を常に確保していることおよび患者の緊急の受け入れを行った実績が過去1年間で31件以上あることか、地域包括ケア病棟入院料・入院医療管理料1または3の届出でも可能とした。在支病の負担軽減・機能強化型算定可能化のみならず、在支診等の後方病床確保負担軽減等による在宅医療の進展に寄与することが期待される。
 在支診・在支病の施設基準として、厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容を踏まえた適切な意思決定支援に係る指針を作成していることが新設されたが、令和4年3月31日において現に届出を行っている診療所等については、同年9月30日までの間に限り、当該基準に該当するものとみなすとのことであり、作成に取りかかる必要がある。
 外来在宅共同指導料の新設と継続診療加算の在宅療養移行加算への見直しについては、本紙第2994号本欄に記載しているので省略するが、在宅療養移行加算では地域の医師会が連携体制確保を支援するために、システム構築に取り組む必要があると考える。
 在宅医療における小児がん診療のニーズが高まっていることを踏まえ、在宅がん医療総合診療料について、15歳未満の小児に対して総合的な医療を提供した場合には、小児加算として、週に1回に限り、1000点を加算する。さらに、小児は緊急の往診を要する病態(低体温、けいれん、意識障害、急性呼吸不全等)が成人と異なることを踏まえ、小児患者に対して、当該病態が予想される場合に往診を行った場合について、緊急往診加算を算定可能とすることは評価に値する。
 しかしながら、相変わらず在宅の診療報酬制度は複雑であり、今回の改定でも簡素化とならず、一般医療機関にはハードルが高いままである。厚労省は在宅版DPCも検討する必要があると考える。
(中)