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医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

とく暮れよ

府医ニュース

2021年12月29日 第2986号

 とく暮れよ
  ことしのやうな
   悪どしは
       小林一茶

 今年最後の「本日休診」となりました。今日(29日)から当院は休診です。
 今年最後の本欄に何か来る年へ希望をつなぐようなことを書きたいと考えていたのですが、一向に思いつかず、締切前日の夜にたどり着いたのがこの句です。
 この句を詠んだ文化10(1813)年は、一茶個人にとっては長年の遺産相続争いが決着した年であり、そう悪い年ではなかったようです。しかし、「悪どし」としたのは滞在していた信濃の善光寺門前で打ちこわしに遭遇したからだと言われています。一茶は打ちこわしが起こるのは世の中が悪いからだと日記に記しているとのことです。この頃は貧富の格差が拡大していった時代で、打ちこわしはそのような背景から起こりました。
 一茶で思い出すことがあります。小学校6年生の頃だったか、私が子ども向けに書かれた一茶の伝記を読んだ感想文に「一茶の一生は不幸続きでかわいそうな人だと思った」と書いたら、それを読んだ母が「それでも一茶には俳句があった」というようなことを言いました。今なら、その意味が分かります。
 「悪どし」は早く終わって、新しい年は良い年になってほしいという希望を含んでいる句と思いたいです。
 皆様、良いお年をお迎え下さい。(瞳)