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時事

接種後の死亡と接種による死亡

府医ニュース

2021年12月29日 第2986号

「情報不足により評価できない」は減らせられるか

 12月3日、厚生労働省「厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」が「薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」と合同で開催され、ファイザー社およびモデルナ社の新型コロナワクチンについて、重大な副反応に心筋炎、心膜炎を追加することが了承された。また、これらの疾患を副反応疑い報告の対象とし、接種後28日以内に発生した場合の報告を義務化した。
 心筋炎関連事象に関して、10月15日の同会議では、①いずれのワクチンにおいても、COVID―19による発生率と比較して、接種ベネフィットがリスクを上回ると評価できる②10代および20代の男性については、ファイザー社に比べて、モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が高いことから、ファイザー社ワクチンの選択も可能――とされていた。
 今回示されたデータでは、ファイザー社ワクチンで10~39歳において、モデルナ社ワクチンでは10~39歳および40~64歳の群において、接種後死亡報告頻度(観察期間21日)が一般人口死亡報告頻度を上回っていた。同部会では、▽死亡事例を個々に評価した結果、現時点では、mRNAワクチンとの因果関係が認められる事例はない▽しかし類似事例を集めて解析した場合、通常より接種後の発症率が上昇していれば、結果として因果関係を疑う要素となる▽現時点においては、接種と死亡との因果関係に関し、心筋炎関連事象が注視されるべき▽その他の疾患については、現時点で接種と死亡との因果関係が明らかなものはない――とまとめている。
 ちなみに、心筋炎関連事象とワクチン接種の関係を最初に指摘したのは米国CDCであり、その根拠がVSD(Vaccine Safety Datalink)によるデータである。この予防接種安全性モニタリングシステムには、9つの病院グループからの、約1200万人の接種履歴と医療情報が日常的に集められている。米国ではこれらをもとに、ファイザー社とモデルナ社のワクチンについて、接種と死亡の間に因果関係は確認されていないと発表している。「同様の仕組みを日本でも」と望む声も多い。
 我が国の副反応疑い報告制度における接種後死亡例の報告は、11月14日までに計1368件ある。ワクチンと死亡との因果関係については「否定できない」が0件、「認められない」が8件に対し、「情報不足により評価できない」は1360件と、実に99.4%を占めている。
 追加接種の実施を控え、副反応に関心が寄せられる中、一般にも接種後の死亡者数が報じられている。このままでは、あたかも接種〝による〟死亡が1300人余りとの誤解が広まりかねない。ちなみに、接種後のアナフィラキシー(ブライトン分類1~3)と評価された数は、3ワクチン合計で631件である(100万回接種あたり3.2件)。
 因果関係を明らかにするためには、端緒となる報告から死因究明の問題を含め、今後解決すべき課題が多々あるとしても、現状の丁寧な説明とコミュニケーションが望まれる。
(学)