TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

年末恒例

本紙編集委員が振り返る重大トピックス

府医ニュース

2021年12月29日 第2986号

瀬戸内寂聴氏逝去

 1922(大正11)年5月15日生まれ、2021年11月9日逝去
 99歳で亡くなる直前まで、旺盛な執筆と社会活動をされていた氏を語るには、字数がいくらあっても足りない。作家として400冊以上の著作、120を超える小説を残され、衝撃作・問題作として当時の社会で大きな話題となった作品も多かった。性愛を軸に人間の心の懊悩を描く作家としての前半生はスキャンダラスで、「子宮作家」といった毀誉褒貶もあったが、圧倒的な筆力で、作家として確固たる地位を築いていった。「男女雇用機会均等法」や「男女共同参画社会基本法」など影も形もなかった時代、臆することも妥協することもなく、自身の人生を選び取っていかれた姿に、尊崇の念を抱く人は多い。執筆の対象分野は広く、現代小説、時代小説、純文学、大衆小説、ケータイ小説、いずれの分野にも作品があり、更には「源氏物語」現代語訳、寂聴「般若心経」等、多岐にわたった。
 51歳で得度された後半生では、次第に社会的なオピニオンリーダーとしての活躍も活発になった。1997年文化功労者、2006年文化勲章を受章されている。11年の東日本大地震では東北の被災地を回り、講話や講演を行う等、支援を行った。12年には原発再稼働反対を訴え、経済産業省前でハンガー・ストライキをされた。15年には国会前での安保法案の反対デモに若い人達に交じって参加、16年には、貧困や虐待などに苦しむ若い女性を支援する「若草プロジェクト」を立ち上げるなど、晩年に至っても、その活動は衰えることはなく、驚異的であった。万事に旺盛な好奇心を示され、その語り口調は若々しく、ご自身のインスタグラムでも茶目っ気たっぷりの近況をうかがうことができた。
 令和の今では驚かれると思うが、昭和の時代、女性が圧倒的男性優位の分野に参入することは時代の趨勢ではあったものの、女性がその職名で呼ばれる際には「女流」「女」という言葉が冠され、その分野の正統はあくまで男性であり、女流は傍流で劣ったものといったニュアンスがあった。作家の評価を作品そのものではなく、男女の性で分かつことは今では稀であり、文学の分野で「女流」という言葉から、そういった差別のニュアンスを払拭されたこと(当然、その影響は他分野にも波及していったと思われる)が最大の業績ではないか。時代を推し進めた偉大なお一人であった。
(猫)

コロナ禍にMINAMATAを思う

 1972年、写真家ユージン・スミス氏が水俣に住み、水俣病の苦しみを背負った人々の側に暮らした。水俣の住民として撮った写真集「MINAMATA」は石牟礼道子さんの「苦海浄土」とともに、未曽有の公害の現実を、日本の人々だけでなく、世界に知らしめ、震撼させた。それから50年、秋に上演されたユージン・スミス氏の水俣での活動を主題とする映画「MINAMATA」をはじめ、著作・演劇など水俣病に関わる表現がますます増えている。80年ごろ、著作は30冊に届かなかったが、近年は500冊を超えて刊行されている。ユージン・スミス氏、石牟礼道子さんによる触発は今なお消えていない。「水俣病は消えていない」との訴えであろう。
 1950年初頭にネコの奇病を発端としながら、工場廃液に大量に含まれる有機水銀による中毒症と確定されるまで10年以上を費やしている。この間被害が増し続けたことで現在もなお二人のメッセージが多くの人々を触発し続けているのであろう。廃液中の有機水銀が原因との報告が早期から出ていたのにもかかわらず、対応が停滞したように見える。学界・医療関係者で強調が不足していたのではないか。そのため、企業との対峙も辞さずに、行政の迅速かつ適切な判断を促す使命を十分に発揮できなかったのだろう。高度成長期の経済論理による逆風が強かったと言ってよいであろう。結果、世界に類をみない災禍に今もなお多くの人々が苦しんでいる。大いに悔やまれる。
 水俣病から半世紀以上、世界はコロナ禍にある。一人ひとりの行動規範の徹底、学界での協調的な状況分析と提言、医療機関の献身的な取り組みが続けられている。しかし、社会活動の制限という課題では、ややもすると経済的視点が優先され、感染拡大を招いている面が否めない。今なお、人の尊い命の在り方を大切にするには学界・医療機関のみならず行政にあっても「MINAMATA」の教訓をかみしめることの意義は大きい。
(翔)

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催

 新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行により、2020年に開催する予定であった東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、一年間延期となった。21年になり、コロナ禍は更に深刻化したが、大会は予定通り7月から8月にかけて行われた。この開催には様々な立場から、賛否両論が数多く起こったが、結局政治判断により、オリンピック・パラリンピック大会は無観客という形で挙行された。
 大会自体は結果として大きな混乱なく無事に開催され、世界中から参加したアスリートの活躍が多くのところでみられた。我が国の選手も大きな成果を得た人が多く、感動を与えるものであったことは記憶に新しい。しかしながら、この大会は様々な負の遺産も残すことになった。
 当初は、経費をあまりかけない運営を目指したはずであったが、予想されてはいたものの、開催のための費用は莫大なものになった。大会のために今回も多くの「大きな箱物」が建設されたが、無観客開催になったことにより、その実力を全く発揮することなく、そのまま取り壊されるものも多く出てしまった。多額の経費の清算はこれからである。新国立競技場などのすばらしい建物も、今後の施設利用には多くの懸念があり、有効活用については予断を許さない状況である。
 現在、2030冬期大会への札幌の立候補も取り沙汰されているが、オリンピック・パラリンピック大会の、開催の在り方そのものも世界中で議論されており、今後に更なる禍根を残さないためにも、今回の開催結果についての十分な検討が、まず不可欠であろう。(浩)

オンライン資格確認の本格運用始まる

 コロナ禍のこの2年間、オンライン化はあらゆる分野で加速度的に進んでいる。ネット通販やウェブ会議など社会、経済活動に沿ったオンライン化は円滑に受け入れられ拡大した。
 一方で国主導のオンライン化は、計画を打ち出すものの停滞気味なことが多い。10月20日に本格運用が始まった顔認証付きカードリーダーによるオンライン資格確認もその一つだ。元々は今年3月に稼働予定であったが、医療機関側の準備が全く進んでいない、システムの安全性や肝心のデータの正確性が担保できていないなど、見切り発車のお粗末な状況により延期となっていた。
 利用する医療機関側におけるオンライン資格確認のメリットは、窓口での保険証確認業務や入力作業が軽減され、資格過誤によるレセプト返戻も減少するとされる。確かに使用してみると保険証確認が即座に可能でその利便性は高い。
 さて、それは表向きの道理であるが、国が将来に目指す真の目的は、マイナンバーカードの普及促進、健康保険証との紐付け、そして国民の健康、医療、介護のビッグデータ情報のシステム環境を構築するデータヘルス改革の推進にある。このデータヘルス改革の点から、日本医師会はオンライン資格確認に協力的姿勢なようである。しかし、地区医師会の多くは慎重、むしろ否定的立場にある。患者の個人情報、診療情報のセキュリティー問題や、カードリーダーおよび通信機器の設置料、月々の保守料の費用負担、更に少々煩雑な操作など医療機関の負担も大きい。そして何よりも、開業医も高齢化にあり、オンライン資格確認といった新たなシステム導入に対応できないと考えているのが現状であろう。
 実際に運用を開始した医療機関は全体の5.1%に留まっており、また、マイナンバーカードの健康保険証利用者もごく少数で、オンライン資格確認はまだまだ軌道に乗る段階にない。そして、オンライン資格確認は義務化ではないため、新型コロナワクチンを初めて接種する際の迷いの心境と同じように、各医療機関もしばらくは様子見のようでもある。
 それでも国は、2025年にはほぼ全医療機関でのオンライン資格確認を計画している。果たして、この国主導のオンライン化は思惑通りに受け入れられるのか、今後、その動向に注目したい。
(誠)

「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」の公布

 本年6月18日、「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が公布され、9月18日より施行された。
 この法律は、「人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為」を受けることが不可欠である児童(医療的ケア児)およびその家族に対する支援を国、地方公共団体、保育所・学校の設置者等の「責務」としたものである。これは、今まで「努力義務」とされていたものを更に踏み込んで「責務」としたもので、背景に医療技術の進歩に伴い医療的ケア児が増加するとともにその実態が多様化したことがある。
 以前、筆者が学校医をしている公立小学校に医療的ケア児が入学してきた。当時は、支援学校以外での医療的ケア児の受け入れは始まったばかりであり、当初筆者は、その小学校での受け入れは困難と思っていたが、受け入れる方向で入学前に病院主治医、地域主治医、訪問看護師、行政の担当者などが学校に集まって会議が持たれ、筆者も校医として出席した。保護者もその児を伴って出席していたが、教員がその児に話しかけている姿を見て、医療者とはまた違った教育者としての接し方に新鮮な印象を持った。
 入学後、学校看護師が配置されたり、教員が喀痰吸引の資格を取ったりして対応がなされ、その児は入退院を反復しながらも体調の良い時には登校し、何年か後、転居のため転校していった。
 今回の法律の成立は私には感慨深い。「家族に対する支援」も明確に打ち出されていることも重要であると思う。今後の展開を見守っていきたい。(瞳)

池江璃花子さんが東京オリンピック出場

 血液疾患の治療は飛躍的に進歩した医療の一つである。白血病は患者本人に病名を伝えることができない程、予後の悪い疾患であった時期があり、一部の医療関係者において、なおそのような誤解が残っているのは残念である。
 血液疾患の診断、治療における血液専門医を含む多くの医療関係者、研究者の努力により、白血病は治癒可能な疾患となり、多くの白血病経験者が社会で活躍するようになっているが、今回の池江璃花子さんの東京オリンピックでの活躍は白血病を含む血液疾患患者への励ましになったのみならず、多くの人々に白血病は治癒し、完全に復活し得る疾患であることを強く示したと思われる。血液専門医よりみても、白血病に罹患し、骨髄移植を受けた人間が、早期にオリンピックに出場し、活躍できることは想定外であった。出場を成し遂げた池江さん本人の努力はもちろんであるが、彼女を治療し、回復させた医療関係者の努力は称賛に値すると考える。
 残念ながら、血液専門医を目指す若い医師は少ないのが現状であり、その理由は過酷な医師としての生活にある。9時~17時で帰宅可能な仕事環境には程遠く、夜間や休日に呼び出されることの多い専門職であり、使命感に燃えて仕事をしている医師が多いのが現状である。その為、血液専門医を目指す医師は少なく、かなりの総合病院では血液内科の診療科がないのが実情であり、国の施策としても血液内科医の負担を減らす等、血液内科医の増加、血液内科の充実を図る必要があると考える。
 過去に血液内科医を絶滅危惧種と称した総合病院の院長がおられたが、血液内科医が増加するように、政府、厚労省、国民の支援を求めたい。
(中)

10・31衆議院選挙 新自由主義からの転換は難しいか

 菅義偉首相(当時)の総裁選不出馬を受けて、岸田文雄氏は「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」との経済方針を示した。前年、菅氏が自身の総裁選挙で「まずは、自分でできることは自分でやってみる。そして、地域や家族で助け合う。その上で、政府がセーフティーネットで守る」という、自助ファーストの方針を打ち出したものとはベクトルが逆のものであった。
 結果、岸田氏は総裁選を制し、衆院選では選挙前の予想に反し単独過半数を獲得。最近の宏池会系総裁が選挙で苦汁を舐める(下野)というジンクスを岸田氏は打ち破った。国会をほとんど開催せず、行政通達よりも大臣がテレビで発言する内容に右往左往させられた前内閣の新型コロナワクチン政策。岸田内閣には「何をするか(=新自由主義からの転換)」とともに、議会制民主主義の基本である国会を開催し、幅広い議論をもとに国民のための政治を期待したい。新自由主義者が言う「決められない政治」と国会論戦を揶揄してはいけない。野党もどんどん反対すればいい。
 コロナ禍の前から多くの患者、その家族が、疾病以外のトラブルで医療機関にかかれない状況が続いている。20年以上続くデフレ不況のせいである。デフレのせいで供給側の機能不全が起こり、供給不足によるインフレも起きている。このことから、経済政策、つまり、政治で救える命もあることを理解する必要がある。医療政策においても、新自由主義的な要素がたくさん蔓延っている。今後もこの内閣を注視していきたい。
(葵)

医療機関に対するウイルス攻撃

 世界中が新型コロナウイルスで明け暮れた一年だったが、別種ウイルスの猛威が見過ごせない状況になっている。
 ネット社会でのサイバー攻撃は、コンピューターウイルスを用い国家や企業のサーバーをハッキングし、重要データの破壊や窃取、改ざんなどの被害を与えている。代表的な「ランサムウェア」は内外を問わず大手企業にサイバー攻撃を仕掛け、身代金を脅し取る手段に使われている。
 看過できないのが医療機関への攻撃だ。人道上許されることではない。ハッキングは大学病院のみならず一般病院に対しても行われ、医療現場を混乱に陥れている。電子カルテの使用は不能に陥り、データは消失、診療全般を停止せざるを得ず、ゼロからの立ち上げを余儀なくされた側の憤りは察するに余りある。さほど裕福とは考えられない医療機関が狙われるのか理解に苦しむのだが、セキュリティーが甘い、身代金をすぐに払う、そこそこ金を持っているなどであろうか。卑劣な行為に煮えくり返る思いである。昨今は医療機器もデータも電子化が進み、電子カルテやクラウド対応などが当たり前の情勢になっているが、セキュリティーの不安は拭えない。
 ところで、被害を受けた公立病院の対応が実に痛快なものだった。曰く「身代金を支払ったとて完璧なデータ復旧が保証されるとは限らない」「診療を停止する時間の無駄はできない」「身代金の費用があれば新規のシステムに刷新するのが得策」。紙カルテから出直した病院の決断に盛大な拍手を送りたい。
(禾)

ワクチン接種進む――あれもこれも乗り越えて

 11月16日、政府は記者会見で、新型コロナウイルスワクチンの日本での2回接種率が、先進7カ国(G7)で最も高くなったと発表した。国連人口推計を用いた各国比較において、日本は75.5%で、2位のカナダが75.3%とのことである。
 日本では、米国に遅れることおよそ2カ月、2月17日に医療従事者向け先行接種が、4月12日に高齢者接種が始まった。4月19日時点で、少なくとも1回の接種を受けた割合は0.96%と、米国の39.24%とは大きな差があった。5月25日の時点でも5.62%止まりであり、米国の49.15%、更に上をいく英国の56.53%とは大きく離れているのみならず、G7で一際目立つ最下位であった。ところがその後、急速に巻き返し、7月9日に1日あたりの接種数175.5万回を記録し、9月10日には政府が、1回目接種を受けた人の割合が米国に並んだと明らかにした。
 現場関係者の涙ぐましい努力の結果だが、様々なことに振り回されながらの達成でもあった。当初、ファイザー社製のワクチンは、1バイアル5回分とされていたが、1月15日の「実施に関する手引き(1.1版)」で、6回分に変更された。しかし、国内で確保している注射器では5回分しか取れないことが判明し、2月9日の同手引き(1.2版)で、再び5回に戻された。結局、国から6回採取可能な組み合わせのシリンジ・注射針が配布されるようになったのは、5月10日の週からであった。この間、各地で工夫が行われ、話題となった。
 また、厚生労働省は、2月17日の自治体説明会までは、接種券の印刷などの期日を3月中旬までとし、早い準備を求めていたため、接種の日時や場所が未定のまま接種券を発送せざるを得なかった自治体も多く、混乱の元となった。
 更に、国は自治体に対し4月8日には、年代や地域ごとの段階的な接種券発送を求めていたが、4月27日に急遽、自衛隊による大規模接種センターの設置を公表、予約開始日が5月17日とされたため、全高齢者への発送が間に合わなかった自治体も発生した。
 この他にも、ワクチンの保存や配送条件の変更など、様々な紆余曲折があった。ある意味で日本の底力を実感できたが、追加接種(3回目接種)の本格的実施や5~11歳の子どもへの接種に向けて、関係者の茨の道はまだまだ続く。(学)

医師の働き方改革に向けて動き出す

 2024年4月から始まる医師の時間外労働規制の適用に向けた具体的なスケジュールがまとまった。
 まず、医療機関には勤務医の労働実態の把握が求められ、宿日直許可の有無が時間外労働時間数の算定に大きく関与するため、可能な限り宿日直許可を受けるような業務内容の見直しが望まれる。労働時間は、兼業・副業での業務を合算した評価であるため、勤務医個々の兼業・副業先の業務内容・労働時間数、および宿日直許可の有無の申告を受け、把握する必要がある。また、個々の医療機関は、時間外労働時間上限規制等が異なるA水準(一般労働者と同程度)、連携B水準(医師を派遣する病院)、B水準(救急医療等)、C―1水準(臨床・専門研修)、C―2水準(高度技能の修得研修)に分類されるどのカテゴリーに自院が属するかの選択が必要である。
 更には追加的健康確保措置として、連続勤務時間制限・インターバル規制等(A水準は努力義務)、面接指導・就業上の措置(A水準で36協定の月上限が100時間未満は除外)、時短計画(A水準は除外)が義務付けられる。これらは1日に必要な睡眠時間の確保に重きを置いた措置とも言える。
 2年余り先に迫った適用に向けて、準備に取り掛かる必要があるが、勤務実態の把握等については「医療勤務環境改善支援センター」への相談、時短計画の作成については「医師労働時間短縮計画作成ガイドライン」の参照が勧められている。(榮)

今年の明るいニュースといえば

 2021年話題になった言葉に贈られる「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、年間大賞には、今シーズン、MLBアメリカン・リーグのMVPを受賞し、打者としてホームラン46本、投手として9勝の活躍をみせた大谷翔平選手に関連したワードの「リアル二刀流/ショータイム」が選ばれました。
 「リアル二刀流」は、18年に日ハムからロサンゼルス・エンゼルスに移籍してからも二刀流の実験が続き、今年、投打二刀流としての成功が本格的に証明されたこと。「ショータイム」は、大谷選手が登場する時に使われるキャッチフレーズ「イッツ、ショー(翔)タイム!」。
 プレー以外でも注目されたことの一つに、球場での「ゴミ拾い」がありました。花巻東高校時代の佐々木洋監督の指導もあり、目標にたどり着くために必要な要素としても「ゴミ拾い」をあげており、プロ入り後、「稲葉(篤紀)さんが試合中、守備から戻ってくるベンチの前で、ゴミをサッと拾ったことがあったんですけど、カッコよくて感動しました。僕は、前を通り過ぎてから(ゴミに)呼ばれている気がして、戻って拾う。お前はそれでいいのかって、後ろからトントンされちゃうタイプなんです。他人がポイッて捨てた運を拾っているんです。」
 新型コロナウイルス感染症、第4波から5波の重い報道の中、数少ない明るいニュースだったと思います。毎朝の通勤時、大谷選手のホームラン報道が流れると、元気をもらいました。(颯)

コロナ禍中のレトロ

 たまたま堺に用事があったので、わざわざ阪堺電車に乗った。実はこの電車に乗るのは生まれて初めての経験で、何十年来の念願であった。私が鉄ちゃんであれば、とっくの昔に乗っていたであろう名物電車でもある。
 乗ると外観は見えないだけに、内側は単に古い電車であったが、あの加速する時にブーンと唸る非力なモーター音や、手を挟まれそうになる一枚扉のバタンと閉まる様などは、懐かしい昭和の匂いがした。入り口に置いてある電子改札機だけは平成であろうが、乗っていた乗客連中は、不思議なほど昭和の顔をしていたのである。電車の中はムンムンとした生活臭で溢れ返っていた。
 たまたま車庫の前を通った時、初期の木製車両を見かけたのだが、多分イベント仕様の車両なのだろう。しかし車窓から見える所に止めてあるのは偶然ではなく、あれを見た瞬間、どうしても乗ってみたいと思わせる心憎い演出か。廃止計画があった時に住民の大反対があったと、その辺りに住むタクシー運転手が言っていたが、インバウンドが回復する時には、もはや生活臭が片隅に追いやられるほど観光客が殺到していそうな気がする。新今宮にも大きなホテルが立ち、新世界も様変わりしてきた。
 コロナ禍中の一時の昭和を阪堺電車に垣間見たのであるが、それは全く望んでいた通りの路面電車のイメージであった。ただコロナが作り出した令和の偶然だったのかもしれない。
(晴)

 コロナ禍下での越年も2回目となりました。繰り返される緊急事態宣言や自粛ムードにより、季節感が希薄になり、「年の瀬らしさ」が一向に醸成されないのは残念なことですが、来年の干支は、勇猛なイメージの「寅」。我等関西人が愛するのも猛虎・阪神タイガース! ちなみに「虎」を含んだ慣用句や諺は十二支中、最多です。そんな「虎」の年に願いを託し、イラストは「一休さんの虎退治」にヒントを得て、作成しました。(猫)