TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

令和3年度HIV医療講習会

府医ニュース

2021年12月29日 第2986号

早期発見でエイズ発症を防ぐ

 大阪府医師会は10月29日午後、令和3年度「HIV医療講習会」を府医会館で開催した。本講習会は、エイズ予防財団からの受託事業として毎年開催。今回は新型コロナウイルス感染防止の観点から聴講者を入れずに収録し、府医ホームページで公開している。

 当日は、白阪琢磨氏(大阪医療センター臨床研究センター長)が座長を務め、宮川松剛理事が開会あいさつ。本講習会でHIV治療の知識を深め、日常診療に役立ててほしいと期待を寄せた。
 続いて、上平朝子氏(同センター感染症内科長・感染制御部長)が「HIV感染症――治療の進歩と病診連携」と題して登壇した。上平氏は、近年のHIV感染者の新規報告数が減少傾向にある一方、令和2年はエイズ患者が増加に向かったと説明。感染経路は8割が性的接触によるもので、HIV感染者は20~30代が約半数を占め、エイズ患者は40代が最も多いとした。
 なお、同センターでは長期通院者が多く、50歳以上の患者が全体の39%を占めるが、抗ウイルス薬の服薬により90%は良好に経過していると報告。現在は88%の患者が1日1回服用の3剤配合錠を選択しているが、最近では2剤の療法への変更もあるとした。更に、治験の段階だが、近い将来には1~2カ月に1回の2剤注射薬を打つことで、毎日の服薬も無くなると言及。エイズの発症前に発見・治療すれば予後は良い疾患であり、早期発見が重要と強調した。
 こうした中、コロナ禍の影響による受診控えでHIV検査数が半数に減少するなど、発見の遅れを危惧。体調不良者やエイズ発症後の受診が増加することを不安視した。
 その後、HIVの感染対策ならびに病診連携について、▽標準予防策の実際▽曝露後の予防▽エイズ治療拠点病院――などを詳説。薬が進歩し、薬物の相互作用や服薬の錠剤数が増えることもないため、今後は、多くの医療機関でHIV患者の療養を受け入れてもらいたいと結んだ。

梅毒は「偽装の達人」

 古林敬一氏(そねざき古林診療所長)は「性感染症診断・治療ガイドライン2020(日本性感染症学会)」を中心に解説。クラミジア・淋菌の令和2年度までの報告数は、男女ともに20代前半の感染が多く、コロナ禍の中でも減少がみられないとした。なお、梅毒の直近の届出数も、異性間性的接触が原因とするものは減っているが、同性・両性間(男性)では減っていない状況を提示した。
 また、古林氏は自院での梅毒の診療経験を基に、梅毒は「偽装の達人」で、基本的には無症状であると強調。症状が出る場合でも、全科にわたる様々な急性・慢性症状を起こすため、梅毒を想起しづらいとし、保健所や職域での健診、術前・入院時検査などがバックアップ機能を果たしていると説示。梅毒は、ルーチンで血液検査をしないと診断できない疾患であるとあらためて強調した。
 最後に、何らかの性感染症が疑われる場合は、常にHIV検査を念頭に置き、エイズ発症前に無症状のまま発見することが重要であると締めくくった。