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時の話題

医療費の動向

府医ニュース

2021年12月1日 第2984号

概算医療費の年度集計結果から

 厚生労働省は、毎月、医療機関からの診療報酬の請求(レセプト)に基づいて、医療保険・公費負担医療分の医療費を集計した「医療費の動向」を公表している。8月31日、令和2年度の集計結果を公表した。
 今回のデータは速報値であり、労災・全額自費等の費用を含まない概算医療費であるが、医療機関などを受診し傷病の治療に要した費用全体の推計値である国民医療費の約98%に相当する。令和2年度の概算医療費は42.2兆円であり、対前年度比▲3.2%、1.4兆円の減少となり過去最大の減少であった。
 医療費の伸びは、診療種類別に見ると、歯科は減少幅が▲0.8%であり他の診療種別に比べ小さかったが、他の診療種別については▲3~4%の減少であった。受診延日数(延患者数)については、入院が▲5.8%に対して、入院外、調剤は、▲9~10%と大きく減少していた。1日当たり医療費は、入院が+2.6%、その他の診療種別では+6~7%の増加であった。年齢種別では、未就学児の1人当たりの医療費の減少幅が15%を超える大きな減少であり、とりわけ1人当たり受診延日数の減少が大きかった。入院外での医科診療所の主たる診療科別の伸び率を見ると、小児科や耳鼻咽喉科の減少幅が大きかった。
 また、令和3年度については、4~6月における概算医療費は、10.8兆円(対前年度比+9.0%)、1日当たりの医療費の伸びは、対前年度比▲1.4%の減少、受診延日数の伸びは対前年度比+10.6%であった。診療種類別医療の伸びについては、医科入院の医療費は、+6.3%、1日当たりの医療費は、+5.9%、受診延日数は、+0.4%。医科入院外については、医療費は、+13.8%、1日当たりの医療費は、+0.9%、受診延日数は、+12.8%であった。
 コロナ禍前の令和元年と比較すると、概算医療費は+0.6%、1日当たりの医療費の伸びは+6.9%、受診延べ日数の伸びは▲5.9%。診療種類別医療費の伸びは、医科入院については、医療費▲0.9%、1日当たり医療費+6.7%、受診延日数▲7.2%。医科入院外は、医療費+1.7%、1日当たり医療費+8.8%、受診延日数▲6.5%であった。
 令和3年度4~6月については、コロナ禍の影響を受け始めた令和2年度に比較するとやや回復基調であるが、コロナ禍前に比べれば受診延べ日数はいまだ低く、受診抑制が続いているものと考えられる。今後、第5波を含めた7月以降の概算医療費の公表が待たれるが、医療機関の経営は厳しい状態が続いており、来春に予定されている診療報酬改定ではプラス改定が望まれる。