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医師・医療関係者のみなさまへ

大阪医科薬科大学で茂松会長が講義

府医ニュース

2021年6月2日 第2966号

日本の優れた医療を守ってほしい

 茂松茂人・大阪府医師会長は、今後の我が国の医療を担う医学部生に「日本の医療制度と医師の業務」に関する理解を深めてもらうよう、府内の大学医学部に出向き講義を行っている。今年度は、大阪医科薬科大学を皮切りに順次特別講義を予定。5月21日午後には、自身が昭和53年に卒業した同校で、第3学年を対象とした「PBL(Problem Based Learning)診断学入門コース」の特別講義を実施。教室とオンラインにより約110人の学生が受講した。
 中野隆史・大阪医科薬科大学医学部微生物学教室教授の司会により紹介された茂松会長は、我々医師が、社会からどのように必要とされ、関わっていくのかを話したいと述べた。また、医師は医療を行うことだけではなく、「患者にとって適切な医療を受けやすいように導くこと」も重要だとして、そのためにはどういう働きをし、どのようなルールがあるのか、理解を高める必要性を強調した。
 講義では、まず、西洋医学の源流、明治維新の医師団体の黎明期をはじめ、明治39年の医師法成立後、現在の郡市区医師会や都道府県医師会が誕生するまでの経緯を説明した。

国の医療費抑制に対し団結して適正な医療を

 茂松会長は、医師会の存在意義を「国民に対して『医師と医療の質保証』に責任を負う体制を構築すること」であると力説。医療は経済と関連して抑制される傾向があり、新型コロナウイルス感染症の流行など有事の時に、医療が弱いのはそれが一因との見解を示した。こうした状況も踏まえ、医療提供側が一致団結して適正な医療を確立させることが必要だと指摘。医師会は弁護士会のように国が管理する強制加入団体ではなく、政治活動などができる任意加入の団体であり、国民とともに行動することが大切とした。
 また、医療制度の歴史や医療問題の変遷として、▽昭和58年に厚生省(現厚生労働省)が提唱した医療費亡国論をはじめとした医療費抑制政策への改革構想▽平成12年の介護保険法施行▽13年の小泉政権の聖域なき構造改革▽16年の新医師臨床研修制度開始――などを挙げ詳説した。

保険診療のルール理解し遵守を求む

 更に、保険診療の基本を説明。保険医療機関は保険者との公法上の契約の中で、保険診療を行わなければならず、逸脱した行為は指導・監査の上で行政措置があることを示し、ルールの遵守を求めた。その上で医療保険の仕組みや関連する法令、診療報酬が支払われる条件などを解説。不正な診療や請求に注意を呼び掛けた。
 続けて、日本の医療の特徴として、①国民皆保険制度②現物給付③フリーアクセス――などを列挙した。先進諸国と比べて低い医療費で平等な医療サービスが提供されていると言明。1回受診あたりの医療費が低額で、受診回数が多いことが特徴だが、近年の自己負担額の引き上げが問題であると指摘した。

新型コロナへの要望書 国や大阪府へ提出

 講義終盤は、新型コロナウイルスへの対応について語った。令和2年1月に会内に対策本部を設置し、▽研修会開催▽大阪府の専門家会議への参画▽PCR検査外来やホテル療養施設への出務――などの活動を行ってきたと経過を報告。更に、「地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」として、府内の大学病院・公的病院・病院団体などを招集。検証した内容を、国や大阪府に要望書を提出したことを示し、コロナ患者に対する一番の解決策は、十三市民病院のような専門病院の設置だと言述した。また、最近発表された横浜市立大学のコロナワクチンの免疫の研究結果では、2回接種後は、いずれの変異株に対しても90%以上の免疫があることを説示した。

医師として経験を積み患者に寄り添う医療を

 最後に、今後は人生の最終段階におけるアドバンス・ケア・プランニング(ACP)はますます重要になるとし、その普及・推進のため、本日(5月21日)から全国公開となる映画「いのちの停車場」には、府医としても協力していると情報提供。母校の後輩に、医師になってから多くの経験をしていくことになるが、患者に寄り添うことを考え、日本の優れた医療を守ってほしいと結んだ。