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時事

ワクチン接種、いろいろ

府医ニュース

2021年6月2日 第2966号

地域の実情と国の要求の狭間で

 5月21日、総務省および厚生労働省から、高齢者向け新型コロナワクチン接種について、7月末までに終了予定とする自治体の数が1616と、全体の 92.8%(人口比では93.2%)に達したと発表された。12日時点と比べ、126自治体(7.6%)増加しており、総務省の非常に強い働きかけがあったとされる。ただし〝医療従事者の確保等を前提とした回答も含まれている〟との注釈が付いており、実際「7月末までに終了」と回答した自治体において、接種予約日が8月や9月となっている住民が存在したとの報道もある。
 さて、同ワクチンの接種にあたっては、当初より〝地域の実情に応じた接種体制の構築〟が掲げられ、〝○○モデル〟〝○○方式〟を謳う自治体が多く現れた。
 集団接種と個別接種の比重もいろいろであるが、集団接種の方法においては、①厚生労働省の「実施の手引き」どおりに、医師による予診と接種(医師または看護師)の場所を分ける方法②被接種者は予診後並んで座り、医師や看護師の方が移動しながら接種していく方法③予診と接種を同じブース内で行い、予診医がそのまま接種することを可能としている方法――などがある。
 接種順位もいろいろである。ワクチン供給量が極めて少ない中、高齢者施設での接種から開始した自治体、地域住民を対象とした自治体、両者を組み合わせた自治体があった。それぞれを更に細分化した優先順位を設定し、接種券を分割発送していたところもあった。住民対象では、年齢を区切り、時期をずらして発送を行った市町村も多い。
 予約時期については、予約開始日から一定期間内の予約を可能としている自治体が多いが、期間の長さはいろいろである。2週間前、など都度の集団接種実施日から一定期間遡った日を、予約開始日としたところもあった。開始時刻も、0時、9時、正午などいろいろである。一方で、あらかじめ市が接種日時を指定して高齢者に送付、予約手続きは不要とした上で、接種を希望しない場合や指定日の都合が悪い場合などにのみ、連絡を求めているところもある。
 進捗度もいろいろである。概して都市部で接種率が低い傾向にある。全市町村に最低1箱(975回分)のワクチンを配布したため、過疎地では、高校生への接種が始まった村もある。
 国の要求に振り回された影響もある。厚労省は当初、接種券の印刷などの期日を3月中旬までとし、早い準備を求めていたため、接種の日時や場所が決まらないまま接種券を発送せざるを得なかった自治体も多く、混乱の元となった。
 また、国は4月には、年代や地域ごとの段階的な接種券発送を推奨していたため、急遽公表された大規模接種センターの予約開始日に、全高齢者への発送が間に合わなかった自治体もある。
 そして今――。全国で、当日のキャンセルへの対応が問題となっている。国は、自治体の裁量で有効に活用することを求め、河野太郎・規制改革担当大臣は「貴重なワクチンが廃棄されているのは極めて許しがたい」「批判を恐れて廃棄するようなことがないように」と発言している。どうやらこちらも、いろいろなことになりそうである。(学)