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医師・医療関係者のみなさまへ

府医勤務医部会第1~4ブロック合同懇談会

府医ニュース

2021年5月26日 第2965号

勤務医部会活動報告 高齢者医療への自立支援介護の重要性示す

 大阪府医師会勤務医部会では、郡市区等医師会および勤務医部会ブロック委員が意見を交換し、相互理解を深めるため、ブロック合同懇談会を毎年開催している。令和2年度は各ブロックで個別にテーマを選定することとし、第1~4ブロック(豊能、三島、北河内、中河内)では、「自立支援介護」をテーマに選定。3月11日夕刻に大阪市内で開催し、約20人が参加した。
 当日は、一番ヶ瀬明・勤務医部会常任委員が座長を務め、竹内孝仁氏(国際医療福祉大学大学院医療福祉経営専攻先進的ケア・ネットワーク開発研究分野教授)が「自立支援介護から高齢者医療への提案――〝肺炎は治ったが寝たきりになった〟の医療からの脱却と『活動』のとらえ直し」と題して講演を行った。竹内氏は、高齢化により患者の多くが高齢者である現代、「診断をして、薬を出し、場合によっては手術を行い、入院すれば安静にする」というワンパターンの医療が続いていると述べ、それによるQOLの回復はあまり望めないのではないかと言及。また、高齢者医療の多くは慢性期医療であり、介護の問題が絡むため介護福祉士の役割が非常に大きいと強調するとともに、自立支援介護の重要性について解説した。
 まず、自立支援介護に力を入れている特別養護老人ホームに入居したことで、要介護5から要介護2にまで回復した高齢女性の事例を紹介。身体の活動性を保つため、1日に1500㍉以上の水分を摂取するよう意識することで、入居後1年で歩行能力を取り戻し、1人での排泄や常食の経口摂取ができるようになったと述べた。自立支援介護に積極的に取り組んでいる施設ではおむつの使用率が低く、その女性が入居した特養ではおむつゼロ。初日におむつを外し、全介護で排泄介助を行うことで2、3日後には尿意・便意が戻ってくると力を込めた。更に、自立するために最も必要な機能は歩行能力であると強調。「5秒掴まり立ちテスト」を行い、倒れこむまでに5秒耐えることができればその患者は100%歩行能力を取り戻せると指摘。歩行訓練も平行棒によるリハビリが一般的であるが、平行棒ではなく歩行器による訓練が必須であるとして解説を加えた。
 続いて、全国で展開している「あんしん塾」について概説。認知力の向上には、①水分の摂取②健康的な食事③運動④排泄――が重要であり、認知症患者の家族に対して指導を行うことが「あんしん塾」の目的であると述べた。また、認知は能動的行為であるため、その人の能動性によって向上・低下すると指摘。その上で、介護は理論的に行う必要があり、ケアによって症状は改善すると述べた。
 最後に自立支援歯科について説示。口腔機能の正常化によって咀嚼嚥下に関与する筋肉活動の広がりと活動量の拡大が起こり、脳幹網様体賦活系が活性化し、覚醒水準が上がると説明。歯を失っていても義歯の使用により認知症のリスクは抑えられるとして、口腔機能の重要性を訴えた。