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時の話題

オンライン資格確認等システムの現状

府医ニュース

2021年5月26日 第2965号

多くの課題を抱え本格運用開始が延期

 本年3月からの本格運用が予定されていたオンライン資格確認等システムの開始時期が、諸般の事情により延期された。オンライン資格確認については、骨太の方針2019において、「令和3年3月から本格運用する」とされていた。
 目的としては、マイナンバーカードの健康保険証利用を進めるため、また、診療時における確実な本人確認と保険資格確認を可能とし、医療保険事務の効率化や患者の利便性の向上等を図ることを目指して、元年6月21日の閣議で決定されたものである。
 3年3月26日に第142回社会保障審議会医療保険部会が開催され、「オンライン資格確認等システムについて」の現状等が示された。3月21日時点でのカードリーダーの申込数は、約10.3万機関(44.9%)。うち、病院は約5千機関(60.4%)、薬局は約4万機関(66.5%)であり、国立病院機構、労災病院、JCHO、KKRは100%、都道府県立病院は95.1%、市町村立病院は93.2%となっている。マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みは、311万件(8.9%)であり、当初の見込みより遅々として普及が進んでいない現状がある。
 計画では、オンライン資格確認等システムのプレ運用は、3月4日から500機関で開始予定であったが、3月22日時点で54機関にとどまっている。これは、新型コロナウイルスの影響等によるシステム改修の遅れ、更には世界的な半導体不足によるパソコン調達の遅れ、一部カードリーダーメーカーの生産遅れなどが原因と考えられている。
 また、保険者においてもコロナ禍による出勤制限等により、データの登録、確認・修正作業に時間を要しており、保険者が管理・登録している加入者データの正確性についても課題が指摘されている。つまり、▽保険者が登録した個人番号に誤りがある(保険者内での取り違えなどによる)▽被保険者証の情報が登録されていない▽被保険者番号が正確でない――ことなどが課題として指摘されている。
 国は、医療機関等・保険者における現状と課題を踏まえ、オンライン資格確認については、システムの安定性確保やデータの正確性担保などの観点から、プレ運用を継続した上で、遅くとも薬剤情報の閲覧開始を予定している10月までに、本格運用を開始するとしている。
 今後、本格導入により効率化、利便性の向上が期待されるが、システムのセキュリティーの在り方、医療機関側の運用面での費用負担などについても、本格運用に向けて今一度、見直しが必要と考える。