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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だより No.80

府医ニュース

2021年5月19日 第2964号

電話や情報通信機器を用いた診療に関する会員意見調査――立場による意識の相違
大阪府医師会理事 永濵 要

 令和3年2月24日から3月10日に行った「電話や情報通信機器を用いた診療に関する会員意見調査」の結果から、診療所長や病院長、勤務医の意識の相違について報告する。
 新型コロナウイルス感染拡大予防の対応として、初診からのオンライン診療が時限的・特例的に可能となり、現在も継続中であるが、厚生労働省は更に恒久化を検討しており、今年秋に指針改定を予定している。そのことについての考えを尋ねたところ、「時代の流れと受け入れる」としたものは、診療所長が19.0%、病院長は26.8%、勤務医は34.1%と、勤務医で容認する割合が高くなる傾向があった。一方、「特例措置の検証なしに拙速に恒久化を検討することには賛成できない」としたものは、診療所長は40.7%、病院長は19.7%、勤務医は17.1%と、診療所長で容認できないとする割合が高かった。
 「恒久化推進」を問う設問に関しては、「賛成」「どちらかというと賛成」としたもの(賛成派)と「反対」「どちらかというと反対」としたもの(反対派)が、全体では44.7%、48.3%と拮抗していたが、診療所長では32.2%、61.5%と反対派が多く、病院長では46.5%、42.3%となり、勤務医では57.2%、35.8%と賛成派が逆転。全体として、年齢とともに反対派が多くなる傾向が見られた。
 利便性を問う設問で「業務の効率化」を選択したのは、診療所長では12.1%、病院長では31.0%、勤務医では30.2%と診療所長で低く、問題点を問う設問で「診療や薬剤処方に手間や時間がかかる」を選択したのは、診療所長では32.0%、病院長では21.1%、勤務医では20.8%と、逆に診療所長で高い結果となった。病院従事者は「診療の効率化をもたらす便利なツール」、診療所長は「手間が増える煩雑なツール」という認識の違いは、勤務医の専門性やかかりつけ医の診療体制、IT・施設環境の違いなどが理由として考えられる。
 自由回答では、診察の基本は五感を駆使した対面診療であるべきで、オンライン診療では得られる情報が限られるので医療の質と安全性が保障されず手間と時間もかかるとする意見がある一方、患者側の利便性が高い、既得権益を守るため、時代遅れの医療業界とする意見があった。
 医療を享受する患者である国民を一番に考え、利便性や経済性と医療の質や安全をいかに両立するのか、難しい問題である。世界に誇る国民皆保険制度を守るために、電話や情報通信機器を用いた診療に関しては、コロナ禍の混乱に乗じて厚労省や一部の関係団体だけで指針を決めるのではなく、国民にも広く情報を開示して国民全体で議論を行うことが大切である。