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医師・医療関係者のみなさまへ

勤務医部会活動報告

府医ニュース

2021年4月28日 第2962号

高齢者と小児の聴覚障害への取り組み進む
府医勤務医部会第5~7ブロック合同懇談会

 大阪府医師会勤務医部会では、郡市区等医師会および勤務医部会ブロック委員が意見を交換し、相互理解を深めるため、ブロック合同懇談会を毎年開催している。令和2年度は各ブロックで個別にテーマを選定することとし、第5~7ブロック(南河内、堺、泉州)では、「耳鼻咽喉科系疾患」をテーマに選定。新型コロナ感染対策としてオンラインで3月4日夕刻に開催し、約20人が視聴した。
 当日は、幸原晴彦・勤務医部会副部会長が座長を務め、土井勝美・同常任委員(近畿大学医学部耳鼻咽喉科学教室教授)が「高齢者と小児の聴覚障害への取り組み――最新情報」と題して講演を行った。土井氏は、近年、国の聴覚障害に対する取り組みが急激に進んできていると前置き。その要因のひとつとして、2019年4月に難聴議員連盟(委員長=石原伸晃・衆議院議員)が設立されたことを挙げ、取り組みのひとつである「Japan Hearing Vision」の活動を説示した。特に、令和2年度の新生児聴覚検査および聴覚障害児支援の推進予算は前年度の約12倍である6億円の予算がついたと述べ、聴覚障害への取り組みが更に活発化することに期待を寄せた。
 続いて、新生児聴覚スクリーニングについて言及。聴覚スクリーニングは1980年代に世界で始まり、日本においては2001年にモデル事業として開始。17年には産婦人科診療ガイドラインで、推奨度がCからB(実施を奨める)に昇格し、現在の検査実施率は87.6%であると述べた。その上で、「1―3―6ルール」として、出生後1カ月までに新生児聴覚スクリーニング、3カ月までに難聴の診断、6カ月までに療育を開始することが重要であり、6カ月未満とそれ以降で難聴を指摘された場合で、将来の言語力に大きな差が出ると指摘した。
 また、補聴器について説述。日本補聴器工業会が実施した「Japan Trak 2018」の調査報告を示しつつ、難聴者の約14%しか補聴器を所有しておらず、補聴器所有までの行程で「難聴を指摘されてから医師への相談」「医師から補聴器の使用を推薦される」際に離脱する人が多いと述べた。また、日本における補聴器の満足度は38%と欧米に比べて低く、適切な補聴器を正しく装用できるシステムが必要であるとともに、認定補聴器専門店での購入を指導する必要性を語った。
 最後に、難聴と認知症の関係について解説。認知症に対する取り組みが推進されているが、中年期(45~65歳)においては、難聴が認知症のリスクを9%増加させると説明し、高血圧(2%)や糖尿病(1%)に比べ非常に高いリスク要因であると述べた。特に、成人は自身の聴覚に気付きにくく、難聴を発症したまま放置しているケースがあるため、中高年の聴覚スクリーニングが重要になってくるとして、聴覚チェックアプリを紹介しつつ活用を促した。