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医師・医療関係者のみなさまへ

「地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」

府医ニュース

2021年4月28日 第2962号

コロナ患者受け入れに最大限の努力

 大阪府医師会は、第2回「地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」を4月8日の夜に緊急開催。有識者および在阪5大学附属病院、公立・公的病院、病院団体などの代表者が会場およびウェブ参加にて集結し、今後の大阪府における医療体制を話し合った。それら意見を踏まえた要望書を22日に大阪府へ提出した。

 新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)は、第4波に入り、3月中旬より第3波を大きく上回るスピードで感染が拡大している。大阪府は、3月31日の「新型コロナウイルス対策本部会議」において、国に対して大阪府域にかかる「まん延防止等重点措置」の要請を決定。政府は4月1日、同月5日から31日間、同措置の適用を決定した。
 茂松茂人会長は今後の医療提供体制を早急に整えるべく、関係機関を緊急招集した。冒頭、茂松会長はあいさつで、感染力の高い英国型変異株のウイルスの影響により、まもなく新規感染者数が千人を超えると予想。大阪では、大学附属病院、公立・公的病院、民間病院が各々の役割を担った地域医療体制を整え、府民・市民の命と健康を守っていきたいと力を込めた。

民間病院の適格な対応 医療崩壊を防いだ

 次いで、加納繁照氏(加納総合病院理事長)が、3月23日の衆議院厚生労働委員会で「民間病院の現状」について参考人として説明した内容を報告。大阪では約8割の救急患者を受け持つ民間病院の多くが、昨年4月当初はPPEすら不足する状況で、コロナ患者を受け入れられなかったと言及。欧米での医療崩壊は、急性期を受け持つ大病院が感染源となったのが原因で、当時の環境下で患者を受け入れていたら、我が国も崩壊していたと述べた。なお、現在は民間病院が自治体病院よりも多くの感染患者を診ていると言明。現在の重症病床使用率は、危機的状況にあるとし、大阪府からの増床要請に可能な限り協力したいとした。

機能に応じた役割分担 専門病院の設置を求む

 引き続き、宮川理事が司会を務め、コロナ対応に関して、①現状報告②期待するサポート③今後の医療提供体制の在り方――について意見交換した。
 まず、①現状報告では、各病院の重症病床はほぼ満床状態で、一部の病院では手術や救急を停止するなど地域医療に大きく影響。その中において、大阪市立大学、近畿大学、大阪急性期・総合医療センターでは増床を予定または検討しているとした。また、②期待するサポートは、▽改修工事や機器購入の支援▽変異株の情報の提供と退院基準の確定▽ワクチン供給▽人員補充――が列挙された。更に、③今後の医療提供体制の在り方では、後方支援やコロナ専門病院の設置を願う声が多く、将来も踏まえた更なる感染症への対応が求められた。
 佐々木洋・大阪府病院協会長からは、病院の機能に応じた役割分担の検討は重要とし、すべての病院でコロナに立ち向かうべきと力説。生野弘道・大阪府私立病院協会長も、公立公的病院の更なる重症者の対応に加え、民間病院も軽症・中等症患者の受け入れを増やしたいと大阪の一致団結を呼びかけた。
 4月から大阪健康安全基盤研究所理事長に就任した朝野和典氏は、今後、医療逼迫が原因で緊急事態宣言が発令され、更に制限が強いられると、医療側に批判が集中すると指摘。重症病床を300床ぐらいまで確保するためには何をすべきかを医師会として提言することが必要とした。
 最後に、茂松会長は、1床でも可能な限り増床への努力を求めた。なお、府医では感染症に対応できる医師・看護師の研修の場の設置を進めていることを報告。また、地域医療構想では、急性期を減らす必要はなく、有事の際の対応を考えたいとした。その上で、長期的に見れば、要望の多かった十三市民病院のような専門病院の開設が必要との認識を示し、今回の意見を踏まえた要望書を大阪府・関係省庁に提出すると結んだ。

令和3年4月22日
大阪府知事 吉村 洋文 様
大阪府医師会長 茂松 茂人

要  望  書


 新型コロナウイルス感染症の蔓延状況や重症病床の逼迫度に鑑み、本年4月5日に「まん延防止等重点措置」が大阪市へ適用、4月7日には「医療非常事態宣言」が府内に発令されました。
 現在の第4波は、これまでの第1~3波を上回る形で、急激に感染者数・重症者数が増加しています。医療側は社会的使命を果たすため、懸命な対応に努めていますが、医療従事者と病床には限りがあるため、このままの感染拡大は、病棟の閉鎖や救急患者受入の縮小・停止など、通常の医療提供に大きな影響を及ぼすことが考えられます。
 そのため、4月8日に「第2回地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」を開催し、府内5大学病院、一部の公立・公的病院、病院関係団体にご出席いただき、意見交換を図りました。
 会議の中では、喫緊の課題である重症病床の確保や、中長期的な視点での患者対応、地域医療構想等について意見が寄せられました。この難局を乗り越えるためには、引き続き府内の医療関係者が、「オール大阪」で取り組む必要性があり、当面の対応策として下記事項を確認しましたのでお知らせいたします。
 貴職におかれましては、事情をご理解いただき、至急に施策に反映賜りますようお願い申し上げます。



①医療提供体制の役割分担を精緻にした再構築の実施
・喫緊の対応として、公立・公的病院や大学病院を中心に、また対応可能な民間病院の協力も得て重症患者を更に受け入れる体制確保への人員を含めた支援を願いたい
・十三市民病院と同様な「新型コロナ感染症専門病院」の設置
・基本的な体制として、重症患者は公立・公的病院を中心とし、軽症・中等症患者は民間病院で対応する形での病院機能に応じての明確化
・病院間には、その保有する設備、人的資源に差があり、一律ではなく、個々の病院の対応能力を適正に評価した施策の実施
・重症病態より気管挿管を離脱できた状態での受け入れ可能な病院の確保
・容体が安定した軽症・中等症患者は速やかに転院(後送)できるよう、地域の医療圏単位での役割分担の明確化
・3次救急体制の減弱化に伴う周辺地域との連携の確立
・府民の要望に対応できる「特定機能病院」の機能維持
・感染力が低く、療養が必要な患者については、回復期や慢性期を担当する病院を中心に受け入れが進むよう、可能な限りの退院基準の統一化と迅速な周知
②医療スタッフの供給体制
・看護師スタッフの至急の確保
・看護師スタッフの確保のための支援拡充
・医療スタッフの感染対応力向上のための効率的な研修の実施
③地域医療計画・地域医療構想の抜本的見直し
・これまでの「地域医療計画」や「地域医療構想」は新型コロナ感染症により、その不備が明確となった。新型インフルエンザに端を発した新興感染症や地震・風水害等の対策など地域が求める医療への配慮が欠如している状態(国が定めた感染症対応病床は従来78床)であり、「地域医療計画」及び国が進める「地域医療構想」は抜本的に見直す必要がある
・医師確保計画の医師・専門医減少政策は廃止すべき

地域医療確保・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議
参加医療機関および団体

・大阪大学医学部附属病院
・大阪市立大学医学部附属病院
・大阪医科薬科大学病院
・関西医科大学香里病院
・近畿大学病院
・大阪急性期・総合医療センター
・大阪医療センター
・大阪市立総合医療センター
・大阪市立十三市民病院
・りんくう総合医療センター
・加納総合病院
・大阪府病院協会
・大阪府私立病院協会
・大阪府公立病院協議会
・大阪健康安全基盤研究所
・大阪府医師会