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医師・医療関係者のみなさまへ

労災医療研修会

府医ニュース

2021年4月21日 第2961号

職場での感染対策も産業医の役割

 大阪府医師会労災部会および産業医部会の共催による「労災医療研修会」が3月8日午後、府医会館で行われた。この日は2題の講演が実施され、会場・オンラインでの受講を合わせ、325人が聴講した。
 冒頭、加納康至・府医労災部会長(府医副会長)があいさつ。新型コロナ対策に尽力する医療機関に謝意を示すとともに、一層の感染防止対策が重要と指摘。本研修会がその一助になればと期待を寄せた。
 この日は山田義夫氏(同部会副部会長)が座長を務め、はじめに西山利正氏(関西医科大学衛生・公衆衛生学講座教授)が、「新型コロナウイルス時代の感染症対策――職場で発生した場合の対応を含めて」と題して講演。職場での感染防止対策や従業員が感染した際の対応などを、産業医の視点から解説した。
 まず、新型コロナウイルスの特徴に触れるとともに、診断、治療、ワクチンなどを説示。治療法が進歩していることや、国内でのワクチン開発が進む状況などを示した。次いで、日本渡航医学会が作成した『職域のための新型コロナウイルス感染症対策ガイド』を用いて、具体的な対策を説明。マスクとアルコール消毒の徹底で新型コロナの収束は可能だとし、▽共用部の消毒▽トイレの定期的な消毒▽従業員各自がデスクをアルコールで清拭する――などの対策を促した。更に、産業医の大きな役割のひとつとして、「従業員が感染した場合の対応」に言及。差別されることなく、職場復帰まで支援することが大切だと結んだ。

医師の応召義務

 続いて、長谷部圭司氏(北浜法律事務所弁護士/医師)が登壇。「医師の労災と医療倫理」について講演した。長谷部氏は、医療を巡る様々なトラブルに対応する中で、医師法第19条1項に規定される「応召義務」に着目。どんな状況であっても診察しなければならない、という医師側の理解に疑問を投げかけた。その根拠として、令和元年12月25日に発出された通知(医政発1225第4号)を引用し、「診察を拒否できる状況」を例示。緊急の必要性がない時間外での受診、信頼関係が破綻している場合などは、診察を断ることも可能だとの見解を示した。一方で、本通知が発出されたことで、「医師の労働者性確立につながる可能性もある」との見方を提示。医師が診察を拒否できる状況が増えるほど、業務独占となっている「医療」が、多職種で対応できるようになる布石とも捉えられ、「慎重に検討していく必要がある」とした。その上で、法的な見地に基づけば診療しなくてもよい状況であっても、倫理規範で対応することも大事ではないかと加えた。