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新型コロナワクチン

府医ニュース

2021年4月21日 第2961号

先行接種での副反応の状況

 新型コロナウイルス感染症対策の有力な手段とされるワクチン接種が、ようやく我が国でも始まった。医療従事者の先行接種、優先接種から高齢者接種へと順次進められているが、他の先進諸外国に比べると未だ国民のごく一部であり、十分には進んでいない。集団免疫として期待される接種率までにはまだまだ時間がかかりそうだが、先行接種として医療従事者に実施された副反応の状況が報告された。
 3月26日、厚生労働省において「第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会」「令和2年度第14回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」が、合同開催された。会議では新型コロナワクチンの投与初期の重点的調査(コホート調査)として、健康観察日誌集計の中間報告が行われた。これは、SARS-CoV-2ワクチン(コミナティ筋注)接種者の最終接種4週後までの安全性を調査するための前向き観察研究である。
 我が国では2月14日にコミナティ筋注が特例承認となり、同月17日から先行接種対象者に接種されている。今回の調査対象者は、先行接種を受けたNHO、JCHO、JOHASの職員であり、体温、接種部位反応、全身反応を日誌に記した。被接種者は、2月25日に被接種者登録が終了し、1万9808例が1回目接種し、コホート調査に登録された。被接種者は20代から50代がそれぞれ21~25%、60歳以上が8.7%、男性33.8%、女性66.2%、医師16.7%、看護師46.6%であった。2回目接種は1万7579例が接種した。接種後8日目以降に回収した1回目接種1万9035例(全体の96.1%)および2回目接種3933例の健康観察日誌から、1回目接種後の発熱(37.5℃以上)は3.3%であったが、2回目は35.6%と高率であった。
 発熱する場合は翌日が多く、接種3日後には解熱した。接種部位の疼痛は90%を超える被接種者が自覚し、接種翌日が最も頻度が高く、接種3日後には軽快した。1回目に比べ、2回目接種では接種翌日に頭痛(4割)、全身倦怠感(6割)を自覚した。
 平成21年のH1N1pdmインフルエンザのNHO2万人調査と比較すると、コミナティ筋注は、接種部位の疼痛が明らかに高く、2回目接種後の37.5℃以上の発熱(3割)、頭痛(4割)、全身倦怠感(6割)を認めた。2回目接種後も接種30分以内の副反応疑いを認めた。1回目、2回目接種合わせて、顔面神経麻痺を含む末梢神経障害など20例がPMDAに報告された。
 また、アナフィラキシーは、2月17日から3月21日の期間に181件(57万8835回接種)報告されたが、ブライトン分類に基づく評価分類1~3は、47件であった。合同会議では、これらの結果を踏まえ、コミナティ筋注の安全性において重大な懸念は認められないとした。
 5月以降本格的にワクチン接種が進む見込みであるが、少なくとも接種後数日間の過ごし方については、注意が必要であると考えられる。