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医師・医療関係者のみなさまへ

第2回認知症サポート医フォローアップ研修

府医ニュース

2021年4月21日 第2961号

認知症患者へ社会的処方が重要

 大阪府医師会・大阪府・大阪市主催による令和2年度第2回認知症サポート医フォローアップ研修が3月12日午後、府医会館で開催された。当日は、認知症サポート医のほか、認知症疾患医療センター従事者、認知症地域支援推進員ら約250人が来場・ウェブにて聴講した。

 冒頭、中尾正俊副会長はあいさつで、約600人の「認知症サポート医」が、介護など関係機関連携の場で活躍されていることに感謝の意を示し、本研修が地域活動の糧になればと期待を寄せた。
 引き続き、中西亜紀氏(大阪市立弘済院附属病院副病院長)が座長を務め、紺野敏昭氏(岩手西北医師会認知症支援地域ネットワーク代表)が「医師会主導で進めた認知症支援多職種連携ネットワーク――社会的処方を目指して」と題して登壇した。

広い地域の認知症患者 診断・治療とその連携

 まず、岩手西北医師会は5市町にまたがる広い地域を担う中で総合病院も無く、同地域で約5千人と推計する認知症患者をどう受け持つかが課題とした。最初は認知症を診る医師確保のため、3人の同志による勉強会から始め、平成25年12月に「岩手西北医師会認知症支援地域ネットワーク」を立ち上げたとその経過を振り返った。現在、三師会・地域包括支援センター・介護事業者から多職種が参画するが、「家族や地域住民」もその一員であると力を込めた。

医療・介護連携シート 問題点を早期に把握

 また、26年から「医療・介護連携シート」を導入。患者の初診の来院前に、地域包括支援センターなどから詳細な情報が得られる。同シートには、▽家族構成や人間関係・キーパーソン▽病歴・他院の通院状況――などが記載され、患者への問診時間が大幅に短縮。家庭内での問題や解決すべき事象に早く対処できると利点を述べた。更に診察後に治療方針や医療側から見た問題点の提供も行えるため、有用だとした。
 なお、自治体間の医療事情や経済基盤の違いを解消すべく、医師会主導で合同研修会も継続している。

認知症への偏見の払拭 生活モデルへの変遷

 認知症患者に対して「何もできないから、すべてやってあげる」などの周囲の偏見は、患者本人に内在する偏見を増幅させて、行動を抑制させると説示。認知症にやさしく、ともに生きる社会である「生活モデル」への取り組みに変遷すべきと指摘した。
 つまり、認知症患者が、①家族の中での存在感②地域とつながる実感③サークル活動等の興味関心④人の役に立てる――などの生きがいを持ち、幸せの再発見をする手伝いが「治療と介護」の最終目標との見解を示した。
 その実践として取り組んだ「スローショッピング」事業を紹介。認知症の人が「商品を自分で決めて、自分で支払う」という買い物の楽しさをもう一度体験することで、存在感・役割感を認識してもらう内容で、非常に効果があると報告。今後は他の自治体でも事業を展開し、認知症サポーターなどの活動の場として育てていきたいと抱負を語った。

社会的処方への地域の資源づくり

 最後に、患者が抱える社会的課題は、医学的治療だけでは対応できず、社会的孤立や金銭問題などの様々な問題が存在すると言及。地域の資源として高齢者や認知症患者が集える居場所づくりは必要と強調した。そして、人間の本質は自分で決めることの喜び、人に感謝された時や褒められた時の喜び、達成感と幸福感であると結んだ。