TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会

府医ニュース

2021年2月24日 第2956号

医師意見書の重要性を伝達

 障害者総合支援制度と医師意見書に関する説明会が12月10日午後、大阪府医師会館で行われ、約60人が受講した。本説明会は、大阪府からの委託を受け実施。障害福祉制度や医師意見書を記載する際の留意点などが伝えられた。

「支援の量」意識し適切な記載を

 中村芳昭氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大阪精神科診療所協会理事)が座長を務め、はじめに前川たかし理事があいさつ。続いて、川村哲也氏(大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課長補佐)が、「障がい福祉制度と医師意見書について」の講演を行った。
 川村氏はまず、障害福祉制度と最近の動向として、障害者数全体は増加傾向で、障害福祉サービス等予算、利用者数ともに10年間で約2倍に達したと述べた。次いで、障害保健福祉施策の変遷に言及。平成18年に障害者自立支援法が施行され、身体・知的・精神の3障害が共通の制度となり、25年に障害者総合支援法への移行で難病等も対象になったと振り返った。
 次に、障害支援区分を解説。障害者総合支援法第4条第4項に「障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合いを総合的に示すもの」と明記されており、「サービス利用要件のひとつとされている」と述べた。あわせて、障害支援区分は「どこに住んでも平等・公平にサービスを利用できるための指標」であり、標準的な支援の度合いを決定するために必要だと説示。コンピューターによる一次判定、市町村審査会での二次判定を経て区分が決定されるが、医師意見書が重要な役割を果たしており、「支援の量」を意識して「分かりやすく、具体的な記載に努めてほしい」とした。
 その上で、医師意見書の▽基本情報▽傷病に関する意見▽身体の状態に関する意見▽行動及び精神等の状態に関する意見――を詳しく説明。参考資料として、『医師意見書記載の手引き』(厚生労働省/26年4月)や『障害支援区分 医師意見書記載の要点』(大阪府/29年2月)などを挙げ、利用者のためにも「適切な記載」を要請した。また、「障害支援区分」と「要介護度」の主な考え方の違いについても加えた。
 最後に、障害者差別解消法における「不当な差別的取り扱い」「合理的配慮」を解説。大阪府の取り組みを報告するとともに、医療機関にも協力を訴え、「障害者が安心して生活できる社会を目指したい」と語った。
          
 障害者総合支援法に基づく制度などの詳細については、大阪府のホームページを参照願いたい。

前川理事あいさつ
法整備で障害者が暮らしやすい社会に生活支援やサービスの質向上を推進 

 平成18年に施行された障害者自立支援法により身体・知的・精神の3障害に対する一元的な制度が確立した。その後、「障害者総合支援法」が施行され、制度の谷間に置かれていた難病等が障害福祉サービスの対象となり、現在、361疾病となっている。
 また、「障害者差別解消法」「障害者総合支援法及び児童福祉法の一部を改正する法律」が施行され、不当な差別的取り扱いの禁止や、合理的配慮の提供などが社会全体に求められ、障害者の望む地域生活の支援やサービスの質の確保・向上に向けた更なる環境整備が進められている。
 医師意見書に関しては、障害者の支援の基準となる「障害支援区分」において大きな役割を果たす。本日は、医師意見書の書き方のポイントを具体的に説明するほか、大阪府から障害者制度等を概説する。本研修会が障害者施策の理解につながれば幸いである。

「特記すべき事項」などを解説

 李利彦氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員/大精診副会長)が登壇。「医師意見書の書き方のポイント」について自身の診療や審査会の経験を交えて概説した。
 まず、「傷病に関する意見」欄では、「支援するのに必要な情報」を記載することが求められると強調。専門職の立場から、障害の直接の原因となっている病名を記載するよう促した。続いて、「精神症状・能力障害二軸評価」を詳説。機能障害や能力障害を評価し、適切な支援を行うことでハンディキャップを少なくするとの視点が重要とした。また、「能力障害評価」では、就労を想像しての記載、「生活障害評価」に関しては評価を判断する際の目安を説示。「精神・神経症状」については、精神科の視点から各項目を丁寧に解説した。
 最後に、「特記すべき事項」に触れ、本人の生活のしづらさをポイントにおくと記載しやすいとまとめた。