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医師・医療関係者のみなさまへ

新型コロナ感染拡大府医シンポジウム

府医ニュース

2021年2月24日 第2956号

吉村知事が緊急参加

 新型コロナウイルス感染症が初めて確認され約1年。予断を許さない状況が続く。1月7日には埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を対象に緊急事態宣言が再発令。13日には範囲が拡大され、大阪府も対象区域となった。こうした状況を踏まえ、大阪府医師会は2月7日午後、「未知の感染症にどう向き合うか」をテーマにシンポジウムを開催。人の移動を避けるという観点から動画投稿サイトでライブ配信を行った(再生回数は3590回、ライブ最大同時視聴者数は507人)。

医師会と行政との連携を強化

 阪本栄理事が総合司会を務め、冒頭、茂松茂人会長があいさつ。今回の緊急事態宣言では、油断が見受けられるとし、「うつらない」「うつさない」を念頭に行動を心がけてほしいと呼びかけた。また、新型コロナワクチン接種がまもなく開始されることに触れ、「行政との連携を一層深めて適切に対応したい」と表明。今後の府医の活動に協力を求めた。
 当日は、茂松会長、吉村洋文・大阪府知事、大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議座長の朝野和典氏(大阪大学医学部附属病院感染制御部長)、女優・作家・歌手の中江有里氏が登壇。それぞれが新型コロナの見解を示し、意見を交わした。
 はじめに朝野氏が新型コロナウイルス感染症を解説。80%は風邪症状でそのまま治癒し、20%で呼吸困難などの肺炎症状が見られ、5%は人工呼吸器やECMOが必要になるとした。また、ワクチン接種のスケジュールや実施方法を説示。大規模なプロジェクトであり、「医師会・看護協会・行政・府民の協力が不可欠」との見方を示した。更に、新型コロナ対策は「高次、複雑系での意思決定プロセス構築が必要」と指摘。粘り強く戦略を立て、コロナをコントロールすることが大切だと説いた。
 続いて、吉村知事が登壇。まず、医療従事者へ感謝の言葉が述べられた。その後、「府民のいのちと暮らしを守る――大阪府における新型コロナへの対応」と題して発言。政策決定の根幹として、「正確な情報の発信」「プロセスの明確化」を強調し、ライブハウスや感染者が初めて確認された際の情報公開など、大阪府の対応を振り返った。そのほか、▽大阪モデルの構築▽診療・検査体制の拡充▽病床確保▽新型コロナウイルス助け合い基金創設――などを報告。今後の対応についても、「行政の長の責任として、判断することから逃げない」との姿勢を鮮明にした。また、ワクチン接種に関しては、「医師会と協力しながら進めたい」と加えた。
 次いで、茂松会長が府医の取り組みに言及。会員・医療従事者を対象とした研修や府民に向けたメッセージの発信など、新型コロナに対する府医の対策や、行政と連携して取り組んだPCR外来およびホテル療養者への対応などを説明した。更に、ワクチン接種時の「かかりつけ医の重要性」を強調。行政とも連携し、副反応や緊急時の体制づくりを整備したいと付言した。そして、新興感染症に備えるため公的病院を中心に据えた体制づくりを提言。市民の健康・安全を守るには適切な医療体制の構築が必要とまとめた。
 最後に、中江氏が「新型コロナがもたらした世界」として、自身の体験や考えを披露。新型コロナでは不要不急の外出自粛が要請され、特に緊急事態宣言下で仕事が激減した折には「自分の仕事も不要なのか」と思い悩んだと打ち明けた。一方で、芸能界でもオンラインの活用など、新たな活躍の場も広がったと指摘。飲食・観光業など苦しい業界を思いやりつつ、「仕事は他者のためのものでもある」という認識で乗り越えていきたいと語った。

パネルディスカッション
マスクの下は笑顔で 元気な大阪を取り戻す

○新たな生活様式はいつまで続くのか
 朝野氏は「流行は今後も続く」との観点に立ち、「新たな生活様式」は日常生活に定着していくと見通した。吉村知事は飲食店の時短要請に触れ、「ワクチンがゲームチェンジャーになり得る」との見方を提示。大阪は食の都であり、感染がある程度抑制できれば徐々に時短を解除したいと述べた。茂松会長は飛沫・接触感染防止にはマスクが必須だとあらためて強調。加えて、手洗い・手指消毒の徹底を訴えた。中江氏はメディアを通して知ることが多い「コロナ禍での芸能界」に触れ、撮影時の予防対策や心がけについて話した。
○ワクチンの有効性、接種スケジュールなど
 今回のシンポでは、府民に事前質問を募集。もっとも関心の高かったワクチンについて見解を示した。朝野氏は、海外のデータからワクチンの有効性を説明。メディアは正確な情報発信に努め、接種の判断基準を提供してほしいと説いた。また、ワクチンが早期に開発された理由としては、製法の違いだと指摘。世界規模で研究が進んだことも早期に普及した要因とした。吉村知事からは「国からの安定供給」を前提に、9月には府民への接種を終了させたいとの見込みが示された。そのほか、「芸能界、医療界、観光・飲食業のダメージ」「学校休校」など、幅広い視点で議論が展開した。
 結びにあたり中江氏は「マスクの下は笑顔で過ごしたい」と発言。朝野氏からも今回の経験は今後にいかせると前向きな意見が述べられた。茂松会長は、新興感染症に対応するためにも公衆衛生の確立が必要と主張。吉村知事からは、医療関係者の尽力、府民の協力に謝辞が述べられるとともに、「元気な大阪を取り戻したい」とのメッセージが送られた。