TO DOCTOR
医師・医療関係者のみなさまへ

本日休診

梅一輪

府医ニュース

2021年2月17日 第2955号

梅一輪
 一輪ほどの
   暖かさ
 松尾芭蕉の弟子、服部嵐雪の句です。
 今年1月末頃、府下南部の高台にあるカフェの庭で、梅の木に一輪だけ花が咲いているのを見かけました。
 私はこの句は、早春、梅の花が一輪、また一輪と次々に咲いていくのに伴って、次第に暖かく春らしくなっていくという意味だと思っていました。しかし、この句の詞書(前書き)によると、この梅は寒中に咲く梅であり、季節は冬であると解釈されていることを最近知りました。まだ寒い冬に一輪だけ咲いた梅の花、その周りだけほのかに暖かい感じがする――正にそのカフェの庭で見かけた梅一輪の情景です。
 一年前の梅の咲く頃に日本での新型コロナの感染拡大が始まりました。近所の梅林が例年より人出が少なく、ガランとしていたのを思い出します。その頃は一年後、再度の緊急事態宣言の中にあるなど予想していませんでした。
 寒中に一輪だけ咲いた梅の花は、やがて次々に梅が咲き、暖かい春がやってくることを予感させます。近く、日本でも新型コロナのワクチン接種が始まりますが、寒中の梅一輪のような希望になってくれるのでしょうか? その評価はまだ分かりません。
 梅一輪が咲いていたカフェの名は「きぼう」でした。
(瞳)