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医師・医療関係者のみなさまへ

入退院支援における多職種連携の在り方

府医ニュース

2021年2月17日 第2955号

本人に望まれる医療とケアを

 大阪府医師会は、大阪府在宅医療総合支援事業の一環として、1月23日午後、府医会館において「入退院支援における多職種連携のあり方を考えるシンポジウム」を開催。入退院支援からACP(人生会議)へのアプローチを中心に、基調講演およびシンポジウムが行われた。当日は、会場およびウェブ視聴あわせて約300人が受講した。

 前川たかし理事が司会を務め、中尾正俊副会長があいさつ。入院時から在宅に帰る際の支援内容は、「患者本人に望まれるもの」となるよう医療・介護職がしっかり連携を取り、患者・家族とともに進めることが大切とした。そうすることが人生の最終段階、「看取り」までつながると述べ、本日のシンポジウムが、明日からの入退院支援の糧になればと期待を寄せた。

本人にとって最善の医療とケアを

 引き続き、宇都宮宏子氏(在宅ケア移行支援研究所代表)による基調講演が行われた。同氏は「この町で暮らし続けたいをかなえるために――ACPを地域でつなぎ、紡いでいく」と題して登壇。自身が看護師として訪問看護や大学附属病院で入退院支援に取り組んだ経験を基に語った。
 病院では、入院時から退院支援の必要性が予測できるにもかかわらず、医療提供が本人の意向と医療者側で一致できていないことが多いと指摘。「本人が治らない病気を抱えながらどう生きるか」を一緒に考えていくことが必要と力を込めた。
 また、本人にとっての最善の医療とケアのためには、▽本人の意思▽医学的(看護)判断▽家族の意向――の3つの視点についてチームでともに考え、合意形成を図っていくことが重要と言及。ACPは、人生の最終段階で望むケア・暮らし方を、医療者や家族などの大切な人と話し合うコミュニケーションのプロセスだと説いた。
 次いで、シンポジウム「地域における入退院支援の取り組みについて」に移り、①在宅医②在宅医療・介護連携コーディネーター③介護支援専門員④医療ソーシャルワーカー――が、それぞれの立場から日常の実践例などを発表した。

在宅医療・ケアはワンチームで連携

 在宅医の立場から発表した林正則氏(府医介護・高齢者福祉委員会委員)は、入退院支援には医療・ケアが在宅チームとして「ワンチーム」となり、強固なスクラムを組むことが必要と言明。しかし、現状はチーム間や病院との間でも各々認識不足が多いと指摘した。なお、在宅チームにおける医師の役割は、継続した健康管理と医療の提供であり、「今後起こり得る病状・リスクの説明」は必須とした。そして、生活の支援を行うケアマネジャーと役割分担および連携が不可欠とし、情報交換には、できるだけ簡便な方法での連絡が良いと述べた。
 更に在宅医は、普段から病院との連携を深めておき、患者の入院時には「診療情報とともに生活情報まで伝える」ことが、後に望ましい退院につながると力説。退院時には、入院前との違いを適確に判断し、ケアマネジャーなどへ伝える任務があるとした。
 まとめに「チームのメンバーが対等な立場で情報を共有し、患者を支える関係づくり」が最も大切と協力を求めた。