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医師・医療関係者のみなさまへ

調査委員会だより No.76

府医ニュース

2021年2月3日 第2954号

日本の社会保障について(5)今後の負担と給付の在り方 文 島田 永和(羽曳野市)

 前回(本紙第2952号)は、「社会保障給付が現在の水準を維持するためには、負担増は避けられないと考えられている」ということを示しました。今回は、「今後の負担と給付の在り方」に関する府民調査の結果を報告します。
 選択肢は、現在の社会保障の給付水準を①大幅に引き下げて、負担を減らすべきである②ある程度下げても、従来通りの負担とすべきである③保つために、多少の負担の増加はやむを得ない④引き上げるために、負担の増加もやむを得ない⑤その他⑥分からない――の6つです。これらの選択肢を過去の調査と対比させるため、「負担減」「負担維持」「負担増」の3つに大きく分類し直しました。給付の観点からすれば、前二者が「給付減」、後者が「給付維持/増」となります。
 平成20年以降の調査では、それまでの調査と比べ「負担維持」が減り、「負担増」の割合が急増。そのため、「負担減」に「負担維持」を加えた「給付減」と、「負担増」つまり「給付維持/増」とが、拮抗する結果となっています。今回行った調査でも同様の結果で、前者が37.5%、後者が35.9%となっています。20年という期間において、大きな意識の変容があったことになります。ただ、平成15年以前の調査で今回「負担維持」に分類した項目の回答は「社会保障の水準をある程度適正化し、負担があまり増えないように工夫してほしい」となっており、給付の制限の印象がやや薄い表現となっています。その後の調査では「社会保障の給付水準をある程度下げても、従来どおりの負担とすべき」という表現です。この表現の違いが、選択肢の割合に影響を与えた可能性は否定できません。
 制度の持続可能性を考えた時、国民の暮らしに直結する負担と、一方で、セーフティネットとしての社会保障制度での給付のバランスについて、突っ込んだ議論が求められると思います。